校務用PCの1人1台整備はほぼ終了段階にきており、今後いっそう校務支援システムの導入が加速していく。それに伴い「市と県のシステムが異なったとしてもボタン1つで転校処理などは終了」「導入するだけで情報漏えいせずデータが消えない」校務の情報化を進める必要がある、と藤村氏は語る。
校務の情報化により仕事が増えた、ということにならないためには業務見直しをすること、それを市区町村の情報課と協力して行うことがポイントであると指摘した。
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校務支援システムには現在多様なアプリケーションがあるが、システム間のやりとりができず、電子化しても転出転入処理は結局「紙」という状況にならない導入をしなくてはならない。県や市で異なるシステムを導入していたとしてもデータの連携ができる仕組みを実現すべく「低コスト、高パフォーマンス」を合言葉に現在APPLIC(全国地域情報化推進協会)教育ワーキンググループでは、異なるシステムの相互接続を図るための「標準仕様」の策定を進めている。標準仕様を各ベンダーが装備することで、異なるシステムもデータのやりとりが可能になる。
教育委員会あるいは地域ネットワークセンター単位で「共通」な「Web‐based」システムを導入することで、域内での情報共有や業務連携がしやすく、ブラウザだけで全てのシステムが活用でき、利用者・管理者の負担が軽減される。また、割り勘効果により単独調達より安価に導入できる。将来的には、学齢簿との連携も視野に入れた「統合型学習者情報データベース」の流れの中で校務支援システムを構築していく必要がある。
指導要録等の原本完全電子化と全国標準化に向けた「教育情報アプリケーションユニット標準仕様」は現在V1・0。本仕様を装備した校務支援システムは現在9社から提供されており、今後はさらに増える予定だ。また、本仕様は平成25年6月中にV1・1として周知される予定で、データ連携のメリットを享受するためには今後、各教委はこれに準拠した製品の導入が必要になる。
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校務の情報化に失敗しないためには、前提の確認が必要だ。
まず、校務の情報化に欠かせない学校情報セキュリティは、教職員を縛るためのものではなく、教職員が安心して「校務・授業の情報化」を進めるためのものであること。次に、学校においては児童・生徒の個人情報を日常的かつ安心して活用できるシステムとすること。3つ目として、教育委員会と学校それぞれの立場の違いについても理解した上で構築すること。「事故の未然の防止」が教育委員会の優先事項だが、学校の優先事項は「円滑な教育活動の実施」だ。この違いを把握して落としどころを決め、実効性を高めなければならない。
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標準化の取り組みは各国で違いがある。イギリスは校長権限が大きく学校単位で整備されている。韓国では国の権限が大きく、国で単一システムを導入。日本は教育委員会の権限が大きく、自治体単位での導入が主流。そこで日本では、国、自治体、事業者等が協力して標準仕様を検討・策定、かつそれを国から示す必要がある。
イギリスにおいて興味深いのは、「同条件の学校なのに学力が高い」学校の例から主体的な改善方策を示す「学校経営」支援システムとして校務支援システムが機能している点。これと同等のシステムは日本にはまだなく、今後の課題だ。導入はゴールではなく、スタート。どう活用し何を実現するのかについて検討していく必要がある。
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【2013年3月4日】
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