なんらかの校務支援システムを導入している学校が6割を超え、そのうち8割が教育委員会による一括導入と、「みんながやっているからうちもやらねば」という段階に入りつつある。しかしこのような状況においては、望ましい点と、望ましくない点もある。望ましい点は、導入を積極的に検討するようになること。望ましくない点は、導入を決めたものの、担当者の認識不足などで、使いにくいシステムを構築してしまうことが起こり得る点だ。導入や活用をスムーズに進めるにはどうすれば良いのか。各教育委員会を取材すると、プロポーザル方式が増えていること、コンサルを行ってから導入を進めることなど、様々な工夫で進んでいる。
■大阪府教育委員会
大阪府では、平成26年度を目途に現在のネットワークを再構築し、校務の情報化や児童・生徒に関する成績・学習状況等の共有化を進める。同時に大阪府立学校の教育のICT化を進め、府立学校共通の成績・出欠管理等を含む校務処理システムを開発する。
まずはパイロット校での環境整備・研修・試用、サポート窓口を設置した後、全府立学校に導入する。
構築にあたって今年度は「現状調査、コンサルティング等」を委託、それをもとに次年度は「詳細設計、機器調達業者の指導」など、構築・移行計画を策定する「府立学校統合ICTネットワーク設計委託」を「校務処理システム導入費」(校務情報処理システム開発、全校への整備及び運用の継続的メンテ・相談窓口設置)とは別に設けている。
■佐賀県教育委員会
佐賀県では平成23年度より、LMS(学習管理システム)、LCMS(学習教材管理システム)、校務管理(支援)の3つを統合した新たな教育情報システムの構築を進めている。初年度はプロトタイプ版を作成して実証研究校で検証。平成24年度は対象校を拡大、各市町と連携、市町立学校でも取組を促進する。
佐賀県、大阪府ともコンサルティングと導入の予算と時期が明確に分かれている。円滑で活用しやすいシステムを構築するためには欠かせない段階と言える。コンサルティングは重要な要素であるため、ある程度学校業務に詳しいことが求められる。
プロポーザル方式とは、システムの内容、導入の実績、保守、価格などいくつか評価点を設け、その総合点で受注者を選定する方式。管理・運営業務や情報システム開発業務、設計・コンサルティング業務などで同方式を活用することができる。
■加東市教育委員会
兵庫県加東市では、校務用PCはほぼ全教職員にあり、計300台を配備済で、サーバは市役所内に設置して庁内ネットワークを利用して動作している。校務支援システムについては全校・園において未導入だ。そこで今年度、Webアプリケーション型で、ブラウザで動作する校務支援システム(成績管理、名簿管理)及びグループウェアシステムを導入する。導入にあたってはプロポーザル方式で決定。12月にはグループウェアを、4月には校務支援の稼働を開始し、来年4月には本格稼働の予定だ。
■南足柄市教育委員会
神奈川県南足柄市教育委員会でも、校務支援システムやグループウェアが未導入なことから、全小中学校(小学校6校、中学校3校)に校務支援システムの導入を決めた。プロポーザル方式で自庁方式とクラウド方式双方の提案を受け、8月にクラウド方式に決定した。
|
評価項目は、価格、グループウェアの機能、校務支援システムの機能、ハード環境、保守など。担当者によると、クラウドのメリットだけではなく、校務支援システムやグループウェアなどの機能面でとくに評価が高かったという。
今後は1月から校務支援システムとグループウェアの活用を開始。校務支援システムにつては、年度内は試験運用とし、来年度から本格稼働の予定。導入決定から稼働までのペースは早いが、担当者は「導入実績が既にあるパッケージソフトは、短期間でも安心して導入できる」と話す。
■江戸川区教育委員会
江戸川区ではパッケージソフトを活用しつつ、全校導入と学校導入を併用している。
現在、全教員に配備されたPC3000台を活用し、校務処理、グループウェア、保健業務、給食業務、情報発信、情報共有などに取り組んでいる。平成22年度からは、区内全小中学校106校の通知表も電子化。本年8月には、校務支援システムの運用状況について公表した。
それによると、全校で実施しているのは主に校務処理で、出席簿管理、成績処理、児童生徒情報管理など。保健管理についても、全校において児童1人ひとりの保健情報を管理している。出欠情報や保健室利用状況のデータを活用した保健日誌の作成や保健利用状況のリアルタイム確認は、学校判断で導入。電子会議室システムや時間割管理、行事予定等スケジュール管理、施設備品予約なども学校判断による導入だ。
【2012年10月8日】
関連記事