学校校務の情報化が進んでいる。当初は「グループウェア導入」から始まり、現在は成績処理や通知表・指導要録作成まで視野に入れた「校務支援システムの導入」が進んでいる。それとともに、データの安全管理を目的としたクラウド化も始まった。いじめなどによる不登校を未然に防ぐためには、保健情報との連携も有効だ。学校経営の中核とも言える「校務」を円滑に進めることができるシステム構築のために必要なことは何か。
文部科学省による「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」(平成24年3月)の詳細が9月3日、公開された。「校務支援システム」調査結果についてまとめる。前回調査に比べ、質問項目が増え、具体的になっている。質問項目の追加や変更は、システムの進化、活用度の高まりの現れといえる。
調査によると、1万3713校(65・1%)の小学校が校務支援システムを導入している。文科省調査における「校務支援システム」とは、校務文書に関する業務、教職員間の情報共有、家庭や地域への情報発信、服務管理上の事務、施設管理等を行うことを目的とし、教職員が一律に利用している場合のことを指す。そのうち教育委員会で一括整備している学校は77・4%、学校単独整備は14・1%、併用して整備は8・5%。
中学校では、6467校(65・8%)が整備。うち教育委員会での一括整備は73・2%、学校単独整備は17・6%、併用して整備は9・1%。
高等学校では3301校(88・8%)が整備しており、うち教委一括整備は58・6%、学校単独整備は15%、併用して整備は26・4%。
特別支援学校は、82・2%にあたる810校が整備。うち教委一括整備64・4%、学校単独は13%、併用整備が22・6%。
教委一括のシステムと学校独自のシステムを併用している率においては高等学校と特別支援学校が他校種と比較して高い。教委一括で導入されたとしても高等学校の独自性、特別支援学校の特殊性から併用せざるを得ない場合が多いと考えることができる。
■校務支援の用途
校務支援システムの用途についても聞いている。これは、前回調査にはなかった項目だ。
調査項目の中で活用率が最も高いのは、「教職員間の情報共有」で、全体で88・2%。これはネットワークを利用した、電子メール、電子会議室、電子掲示板、スケジュール共有等、いわゆる「グループウェア」を指しており、この導入・活用率が高いのは当然といえる。いまや電子メールは各学校や教委にとって欠かせない。
次に活用率が高いのが、「校務文書に関する事務」だ。
小学校84・7%、中学校85・7%、高等学校79・8%、中等教育学校69・2%、特別支援学校77・8%が「校務文書に関する事務」に校務支援システムを活用している。
ただしここでいう「校務文書に関する事務」とは、通知表や指導要録の作成、学籍・欠席・成績、図書等の管理、進学及び転学に関する事務等を指す。
これら1つでも導入されていれば「校務支援システムを導入している」という数字になる点は、問題点として指摘したい。例えば図書等の管理システムが入っていれば「校務支援システムを導入している」とカウントすることができる。しかし、図書館管理を除いたこれらの機能、即ち「通知表や指導要録の作成、学籍・欠席・成績、進学及び転学に関する事務」の導入・活用イコール「校務支援システム」を導入している、というのが現場の認識のはずだ。
また、児童生徒の健康管理と校務支援システムの連動は、学校経営に欠かせないという指摘もあることから、今後は「保健管理システム」についても調査が追加されることが予想される。
■「学校HP」や「メール配信」
これら二つの機能に比較し、活用率が下がるものが「家庭や地域への情報発信」「服務管理上の事務」「施設等管理」だ。
こちらも前回調査では質問項目がないため比較はできないが、主にWebからの情報発信やメール配信などを「家庭や地域への情報発信」として調査。これは、全校種で46・7%(小学校47・7%、中学校44・9%、高等学校45・2%、中等教育学校65・4%、特別支援学校48・5%)と、約半数弱の学校が、ネットワークを活用した何らかの情報発信を行っている。
学校HPは、学校広報の役割から考えると「校務支援」カテゴリであると考えることができるが、GLOCOMの豊福晋平氏が指摘するように(4面参照)、教員や子どもに、情報発信する舞台を提供する役割であると考えると、次回以降の調査では、「Web発信」「メール配信」各項目について個別に調査されることが予想される。
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休暇、出張等、教職員の服務上において行う、申請や決裁等「服務管理上の事務」についての活用率は、全校種平均で41・5%。
ただしこれについては、小中学校の活用率40%弱に比べ、高等学校57・6%、中等教育学校61・5%、特別支援学校62・7%は比較的活用率が高くなっている。
独自性・専門性が他校種に比べ、より高い教員の集団であることから、休暇、出張等届出管理システムが有機的に機能していると考えることができる。
施設や備品の予約等の管理等「施設等管理」は、全校種で36・9%。これについては若干特別支援学校が高いものの、その他の校種では大きな違いは見られない。
■教育クラウドも調査項目に追加
校務支援システムの運営形態について「従来型ネットワーク」「クラウドコンピューティング」「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」についても設問。これも今回より追加された質問項目だ。
「従来型」は、小学校72・9%、中学校74・5%、高等学校70・6%、特別支援学校65・6%。
クラウドコンピューティングについては、小学校27・0%、中学校25・3%、高等学校29・3%、特別支援学校34・2%が導入している。今後はクラウドコンピューティングの導入率が増えることが予想される。
なおパブリッククラウドとプライベートクラウドの比率については、現状では後者が圧倒的に多いが、安全面、価格面双方を実現する目的で、パブリッククラウドをセグメント化してプライベートに似た形式で活用する方式などもある。(7面参照)
詳細=http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001041083&cycode=0
【2012年10月8日】
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