【特集】科学技術国日本の人材を育む 理科教育の充実に向けて
■中学校
2003年のPISA調査では、読解力を始めとした日本の学生の学力低下が大きく取り上げられたが、理科は国際的に見て常に上位の成績にある。その中で課題として挙げられるものは(1)「子どもの理科の学習に対する意識の問題」(2)「国民の科学に対する関心の低さ」(3)「子どもの自然体験などの不足」(4)「基礎的な知識・理解」(5)「科学的な思考力や表現力」などだ。
こうした課題の解決に向けて、新学習指導要領では、「科学に関する基本的な見方や概念の一層の定着」を求めるとして、小学校で学んだことを、中学校や高等学校でつなげていくような接続を意識したものになっている。
具体的には、「エネルギー」「粒子」「生命」「地球」の4観点において、小学校から高等学校までを構造化して教えるようにした。例えば「エネルギー」は、小学5年「振り子の運動」や小学6年「てこの規則性」で学んだことを、中学3年の「運動の規則性」や「力学的エネルギー」、高等学校の物理基礎での「エネルギーとその利用」などにつなげていく。
全国学力学習状況調査に今年から理科が追加されたが、その背景には科学技術を担う人材の育成が求められていることにある。理科は単に知識を身につけるだけでなく、学習活動や日常生活での課題解決に知識を活用することが重要。そこで学力調査でも「知識」と「活用」を区分せず、一体的に問う方法を取ることにした。
清原氏は「学んできたことを振り返ってみたくなる指導、その先を追究してみたくなる実験が求められる。中学や高校の先生は、それまでに生徒がどういったことを学習してきたか、どれだけ学んだことが身についているか状況を捉えた上で指導してほしい」と語った。
荘司教諭は、「実験の計画を立てる」、「既習の知識を使って科学的に考える」、「技能を使って調べる」ことを意識して実験に盛り込んでいる。
実験は、グループごとに実験の計画書を書かせ、安全性を教師がチェック、次の1時間で実験を行う。
中1の化学領域では、何種類かの金属を用意、それぞれが何かを推測する実験を行っている。体積や質量、融点などを測定、既習事項から判断し、その物質が何か見極めていく。
また、中1「気体の発生と性質」では、学んだ気体の性質の知識を活用して、入れ歯洗浄剤や風呂釜洗浄剤から出る気体は何かを推測する実験も行った。
「酸素は燃えるということが知識で分かっていても、ポンと音を立てたから水素だと思いこんでしまうなど、実験を行ってみると間違える生徒も多い。やはり体験は重要であると改めて感じた」と話す。
中3の電気分解では生徒に科学的な体験をさせるため、銅版にニッケルをメッキする実験を行う。電気分解について学んだことの応用実験だ。マジックで書いた部分はメッキされないので、生徒は好きな文字を書いてメッキした銅版を喜んで持って帰るという。アンケートでも生徒に人気の高い実験のひとつだ。
ニッケルメッキの実験で興味を持たせた後は、電解質と非電解質の実験だ。科学的な根拠を持って予想させることがねらいで、塩化銅水溶液や塩酸に電流を流して生成物を予想する。2年の既習事項である「原子の性質」の知識で生成物を予想、発生した気体については中1の既習事項である「気体の確認方法」で確認するという。
【2012年8月6日】
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