【特集】科学技術国日本の人材を育む 理科教育の充実に向けて
■小学校
村山教科調査官は「問題解決能力は、理科で育成できる」と述べる。「小学校理科教育の今日的課題として、理科を学ぶ意義や有用性への意識低下、体験不足、問題解決能力の低下などがあった。そこで新学習指導要領『理科』のキーワードを『自然と科学と生活』『具体から抽象へ』とし、子どもが自然とのかかわりの中で問題を見いだし、見通しをもった観察、実験などを通して自然の事物・現象と科学的にかかわり、結果や結論を生活とのかかわりの中で見直し、実感を伴った理解を図る学習内容とした」と話す。
「自然体験や科学的な体験が不足している今の子どもだからこそ、小学校理科では実験・観察などの体験が求められている。具体の事物・現象に触れ、実際に操作する学びから得られるものは大きい。5分や10分などの短時間で実験を終わらせてしまう実験では、体験不足は補えない」
「問題解決能力」については、「何のために観察や実験を行うのか、子ども自身が問題を設定するところから始めるべき。ただし、子どもが1人で問題を設定するのは難しい。クラスやグループという集団の中で練り上げる作業や、教員のサポートがあればこそ、児童は問題を作り上げることができる。問題解決能力は、理科で育成しないと身につかない」
全国学力・学習状況調査の問題の作成にあたっては、「系統性や観察・実験を問題解決に向けて想定しているかを問う問題を出題した。事実をしっかり認識することができれば、そのような結果になる理由を言葉で説明できる」と話した。
全国学力・学習状況調査によって、児童が「活用」型の問題に苦戦していることがわかった。そこで森田教諭は「活用型」を意識した理科授業を展開している。
知識は活用できて初めて習得したと言える。そこで、森田教諭は児童の活用能力を育てるための3つの場面を紹介した。
(1)1時間の授業の中で、前半で学んだことについて後半で活用型問題を出す。例えば小学5年「てこ」の授業で、支柱からの距離と重さの関係を学んだ後、幾つもの錘をぶら下げて吊りあっている状態の「てこ実験器」に、さらに錘を加える活用問題を授業の後半に出す。その問題を通じて、どの程度理解しているかを見極めることができる。
(2)1つの単元が終わった区切りなどで、既習事項の活用が総合的に必要な実験を行う。例えば小学5年「溶け方」で飽和ミョウバン水を冷やすと結晶が出てくることを学んだ最後に、ビーカー全体を冷すのではなく、ビーカーの中に冷凍ボールを入れて、内側から冷す実験を行う。この結果を予測するには、それまでに学んだ、対流や飽和に関する知識が求められる。
(3)日常生活と関わる場面を設定する。小学5年「振り子と衝突」で振り子の実験を行った後に、メトロノームなど身近な道具の中から振り子の原理を使ったものを探させるなど、学んだことが自分の生活に深く関わっていることを理解させる。
「予測通りの結果になる経験、予測を裏切られる経験、双方ともに必要。謎が解けることこそ理解につながる。そうした体験を与えるためにも活用型の実験が求められる」と、活用型の理科実験の可能性を話した。
【2012年8月6日】
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