昨年度の本紙で、自身が校長1年目に発信した「校長室通信」を紹介してくれた、前・大阪府高槻市立城南中学校校長の前田勉氏は、3月末日をもって38年の教員生活を終えた(現在は私学で活躍中)。本号より開始する前田氏の新連載「管理職と学校経営」は、学校経営を通じて管理職が教職員と、児童生徒と、どのように具体的に関わっていくことが大切なのか、執筆してもらう。
1年のスタートにあたる4月、新たなメンバーも加わり職員室は活気にあふれている。この時期の管理職の有り様(スタンス)は、これからの学校経営を左右すると言っても過言ではない。
とりわけ、校長の発信能力は学校づくりの骨格として、その人間性は教職員の士気に、そして調整・行動力は保護者・地域に影響を与える。あたかもそれらはボディブローのように、相乗的な教育効果が期待できる。
良い管理職とは
さて、「良い管理職とは?」を自問する時、筆者は二通りの「良い」を連想する。一方はリーガルマインドを意識しながらもバランスの取れた「適切で良い」であり、他方は是認を甘受するだけの「何でも良い」である。
以前聴講した講演「私の仕えた校長」(講師:野口克海氏)の中で、教育困難校で教員として教鞭を執っていた時代、3人の信奉する校長から薫陶を受けられた思い出を述懐されていた。氏は、時々のエピソードを交えながら、一人からは「情」を学び、二人目からは「知恵」を学び、三人目からは「力」を学んだと締めくくった。
当然のこと、それぞれ突出した人間性にスポットを当ててはいるが、バランスある校長に仕え育った教職員は幸せである。
間違っても、批判を忘れた無条件の是認に走ることが是と勘違いする集団の中で育つ教職員は不幸であり、子どもたちはもっと不幸だということを肝に銘じなければならない。体罰事象やいじめ事件、様々な不祥事で騒がれる学校がそれを証明している。
校長の包容力が若手の活躍につながる
「校長が変われば学校が変わる」と言われるが、カリスマ的校長先生に出会うこともないことはない。特色を打ち出し、大きく変わった学校をよく見ると、校長の包容力に触発された若手教職員が活躍していることに気付かされる。教職員が持つ潜在的な能力をいかに引き出し、いきいきと活躍させるかが、校長の本質だろう。
視野を広く保ち 大局を見失わない
日露戦争の日本海海戦を勝利に導いた作戦参謀の秋山真之は、戦闘の最中も双眼鏡を覗かなかったと言われている。「はっきり見える反面、視野が狭い。自分は肉眼で大局を知ればよろしい」と、狙う目標や進む方角を指示し、視野を広く保って大局を見失わないことを心掛けていたそうだ。リーダーとして教職員のベクトルを一致させるための努力は大切だ。
日本弁護士連合会の元会長・中坊公平氏の名言、「全面の理、側面の情、背面の恐怖」は学校経営でも肝要と思われる。
前田 勉
前:大阪府高槻市校長会会長
【2013年4月22日号】
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