今年度初となる第40回教育委員会対象セミナーが7月4日、東京都内で開催され約110名の教育委員会・教員が参加した。セルラーモデルの情報端末を児童生徒用に約8000台導入する渋谷区教育委員会や初めて校務支援システムを導入した那須塩原市教育委員会などICT環境の整備・計画・活用に関する事例が報告された。今年度セミナー予定は教育家庭新聞Web(www.kknews.co.jp)へ
那須塩原市教育委員会 相楽尚志係長 |
那須塩原市教育委員会・学校教育課の相楽尚志学校指導係係長は、市の校務支援システム整備・活用について報告した。
相楽氏は2年前、首長部局で情報セキュリティ強靭化に取り組んでおり、異動当初は「教育委員会と首長部局ではかなり仕組みが異なっている」という印象を受けたと語る。
最初に、市のこれまでの校務関連の整備について振り返った。
市では平成21年度、初めて校務用PCを導入。しかしUSBメモリの持ち歩きによる情報漏えいが起こりがちなことから、情報漏えいリスク解消を目的にシンクライアント方式でネットワークを整備。セキュリティは保たれたが利便性に多くの課題があり、最も深刻なのがサーバスペックの大幅な不足であった。また、当時はグループウェアとファイルサーバのみの導入で、事務効率化までには至らず、私物PC持ち込みという問題は解消しなかったと語る。
そこでシステム更新時を前に平成25年度にネットワーク最適化計画を立案。平成26年に、プロポーザル提案によってどの事業者の校務支援システムを導入するかを、学校現場教員の意見を元に決定した後、校務用PCなど機器等のプロポーザルを行った。
このとき更新したのは、センターサーバ等の仮想化基盤、校務用PC900台県費負担教育と一部の市採用職員)、校務用プリンター、学校設置用ファイルサーバ、持ち込みPC対策、グループウェア。自宅からも校務サーバにアクセスできる仕組みは、二要素認証で実現した。
校務支援システムは新規導入であった。
校務支援システムには多様な機能があり、それぞれ期待できる効果があり、使い方次第ではさらに活用が広がりそうであると語る。
その反面、活用に従って課題も見えてくる。教員のスキル差が大きいこと、運用とシステムの整合性などそれぞれについて1つひとつ改善対応を試みている最中である。
市では教員の意見を尊重して導入システムを選択した。選択基準については「機能だけではなく、サポートや研修などの面を重視したほうがよい。また、モデル校から導入して段階的に課題を解決しながら全校整備につなげるほうがより円滑に進む可能性が高い」と話した。
首長部局時には情報システムの運用にあたり、法律改正に伴うシステムの改修が事業者負担か自治体負担かで問題になったこともあり、システム導入後、予期しないコストがかからないような配慮が必要であるとする。今後は、学習指導要領の改訂や教育情報セキュリティポリシー策定などに従いシステムの改修が必要になることが予想される。
このほか様々な要因から、当初想定していなかったことが起こり、運用・システムの変更が求められる。初期設定以降の変更は教委負担で、という流れだと対応できないことも起こる。軽微な改修は事業者、国が費用を補助するような大規模改修は市負担とする等、取り決める必要がある。校務支援員についても事業者負担とするなど仕様書に盛り込んだほうが良いと感じている、と話す。
校務支援システムはコストがかかることから、導入後の効果検証は必ず求められる。導入前にアンケートを行っておくなどそのための準備はシステム導入前から準備する必要があると語った。
【講師】那須塩原市教育委員会 学校教育課学校指導係係長 相楽尚志氏
【第40回教育委員会対象セミナー・東京:2017年7月4日】