8月23日、教育家庭新聞社主催で第42回教育委員会対象セミナー(岡山開催)が開催された。当日は多数の教育関係者が参集し、ICTを活用した教育事例を共有。積極的な情報交換が行われた。
新見市教育委員会学校教育課・真壁雅樹主査 |
新見市(小学校17、中学校5)では平成26年のICT活用教育推進事業により、校内無線LAN、生徒1人1台活用ができる情報端末(iPad)、普通教室と特別教室への電子黒板全校整備、ICT支援員の確保・養成などを中学校対象に行った。現在、一斉授業やグループ活動においてほぼ全ての教科において活用されているという。真壁氏は「ICT支援員が最も重要」と話す。現在2人の支援員が全中学校を巡回。不足したときは自ら学校に赴く。
情報端末は、ファイルの作成や共有、共同作業ができるDropboxを活用している。ワークシートなどの共有ファイルは、レイアウトのズレが生じないようにPDFを主に使う。生徒は情報端末上で、自らDropboxにワークシートなどを取りに行き、自身の端末で書き込み、それをDropboxに提出。グループ活動ではDropboxに写真などをアップ、共有して手元で発表資料やレポートを編集、仕上げて再度アップしている。
教員や生徒が電子黒板からDropboxにアクセスして任意のものを表示、説明や発表をしたり、修学旅行先で写真や情報を報告・掲載したり、アンケートアプリ「PingPong」で生徒集会のリアルアンケート・集計・提示などを行うなど様々な活用が広がっている。
学校によっては持ち帰り学習や反転授業、eラーニングにも取り組んでいる。アプリカルテ(※)も作成。現在約200種類をラインナップして活用を推進。問題が発生した際のトラブルマニュアルも作成。活用が浸透するにつれて授業の流れにも変化が生まれた。
教員はこれまで以上に時間配分に配慮。以前は数人あてて発表してまとめとすることも多かったが、様々な考えを共有しやすくなったことから、考えを練り上げて深めるなど生徒同士の意見交換や発表時間の確保を意識するようになった。生徒からは「どう考えてよいかわからないときは、ほかの人の解答を見てから考えることができる」「こんな考えもあるのかという発見があり刺激になる」などの感想を得ており「思考する力、応用力、人の意見を参考にして自分の考えを形成する力がついてきているようだ。最も大きな変化は『白紙』解答がなくなったこと。何かしら自分の考えを書けるようになっており、話す、聞く、伝え合う活動がごく自然に生まれている」と語る。小学校も同様に1人1台活用を展開したいが、予算確保が難しい状況で、研修では「今あるものでできること」を考えて取り組んでいる。一方で、教材費で情報端末を購入する小学校も増えているという。
今年度から、3年間無償で人型ロボットPepperの貸し出しを受ける「スクールチャレンジ」が始まったこともあり、プログラミング教育については小学校4年生以上から中学校まで全22校で実施。現在、新見第一中学校では新見市の情報をPepperが紹介するプログラムに挑戦。特別支援学級においても、テーマを決めて、自作アプリに挑戦している。また、プログラミング部を立ち上げ、より高度なプログラムを作成する予定である。「ロボホン」も活用。同校のWebにはプログラミングの教育計画や指導案、動画などを公開している。
6月の公開授業では、総合的な学習の時間で各班の決定したテーマについて、Pepperが答えてくれるプログラムを作成し、発表した。今後はPepperを利用した発表会をすることを考えている。(※)新見市では平成27年度「ICTを活用した教育推進自治体応援事業」に採択されており、本報告書にアプリ一覧を掲載している。
【講師】新見市教育委員会学校教育課・真壁雅樹主査
【第42回教育委員会対象セミナー・岡山:2017年8月23日】