教育委員会対象セミナーを10月3日に熊本市内で、10月13日に金沢市内で開催。堀田龍也教授・東北大学大学院・東京学芸大学大学院、大久保紀一朗講師・京都教育大学教職キャリア高度化センター、4つの教育委員会と3つの小学校、中学校、高等学校が登壇し、次のフェーズに向けたICT活用について報告した。
富山県氷見市ではICTとスクールバスを活用したハイブリッド型交流で小規模校のデメリットを克服する取組を進めている。中学校区内の上庄小(児童数102人)、海峰小(56人)、灘浦小(34人)の3校による遠隔合同授業の取組を上庄小・坂田校長が報告した。
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GIGAスクール構想で最も変化を実感したのは高速通信だ。本市ではGIGAスクール構想以前より3人に1台の端末を導入していたが、2020年に1人1台の端末と高速通信の整備により、高齢者とのオンライン交流や他県の学校とつないだ遠隔交流、市内2校の小規模校をつなぐ遠隔合同授業など遠隔教育が現実的な学びに進化した。
遠隔合同授業は小規模校で多様な意見が出ないなどの課題を抱える近隣の学校同士をつなげて、多様な意見に触れ、発表力やコミュニケーション能力を培う目的で行うものだ。
遠隔合同授業を2校で行った際に「3校をつなげたら面白いのではないか」「電子黒板で顔を合わせるだけでなく1人1台端末も使ってはどうか」という意見が聞かれたため、いくつか構想を練った。
まず、教室内の電子黒板同士をつないで互いの教室が見える状態とし、児童の端末ではクラウド上の共同編集を活用して文字で交流する構想だ。
操作に慣れるため、朝の会と帰りの会でTeamsを使って画面上でクイズを出し合ったり、今日頑張りたいことを書き込んだりして練習を重ねてから授業に臨んだ。
授業では3校の6年生・計42人が冬をテーマにした俳句を発表。端末上で感想を伝え合った。子供たちは「色んな学校の人と意見を共有できることが楽しい」「中学校に進学したときに直接意見を交わすことが楽しみになった」とクラス替えの経験がない子供たちの懸念をなくす効果があった。教員も「少人数だと考えに限りがあるが、大人数だと考えや感想に広がりが生まれる」とメリットを感じていた。
電子黒板のみをつなぎ端末は使わないパターンも実践。これは負担感が最も少なく気軽に行うことができる。
グループごとに端末をつなぎ映像と音声で交流するパターンは人数の少ない2校で実践。しかし少人数でもハウリングが起こるため、端末の位置を工夫する必要があった。
本市では、スクールバスを使ったリアルな交流とICTを使った遠隔合同授業を合わせてハイブリッド型交流と呼んでいる。ハイブリッド交流の目的は、学校とふるさと教育、さらに地域を守ることにある。
小規模校は統廃合の危機に直面している。学校がなくなると地域も衰退していく。小規模校ならではの「よさ」を生かしながら、スクールバスやICTによって小規模校のハンデを克服し、適正規模の学校以上の教育効果を上げられるように取り組んでいきたいと考えている。このことが地域に学校を残すうえでの一つの方策になると考えている。
【第101回教育委員会対象セミナー・金沢:2023年10月13日 】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2023年11月6日号掲載