第91回教育委員会対象セミナーを10月11日、鹿児島で開催。1人1台端末活用について鹿児島県教育庁、武雄市教育委員会、久留米市教育委員会、高森町教育委員会が報告。1人1台端末活用のアップデートについて山本朋弘教授が提案した。
端末持ち帰り学習は既に6年目、遠隔授業は8年目を迎えている熊本県高森町教育委員会(小学校1校・中学校1校・義務教育学校1校)。GIGA端末配備後の取組について古庄泰則氏が報告した。
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高森町の学校では登校後、児童生徒はすぐに情報端末(Chromebook)を開き、タイピングを練習したり係活動のアンケートを作成・配信したり発表資料をまとめたり、個人や協働でそれぞれの活動に取り組んでいる。学びがつながる課題解決型学習「たかもり学習」にも10年間取り組んでいる。
端末の持ち帰り学習はデジタルドリルから始まり、既に6年目を迎えた。現在はオンライン英会話もスタート。教育課程外の活動として小学校6年生から中学校3年生で実施。ネイティブスピーカーと1対1によるオールイングリッシュの授業を1回25分×45回行っている。昨年までは学校で一斉に行っていたが、今年度から家庭で各自が行うようにした。
文部科学省事業ではこれまで「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業」(2015~17年度)、「遠隔教育システム導入実証研究事業」(2018~19年度)、「遠隔教育システムの効果的な活用に関する実証研究事業」(2020年度)に参加。県からは「くまもとGIGAスクールプロジェクトモデル地域」(2021年度)を委託。ダイワボウ情報シムテム、インテル、熊本日日新聞社、熊本朝日放送などの企業とも連携し教育DXに取り組んでいる。
遠隔教育は国の実証事業以降も継続。他校との遠隔合同授業、目的や意図に応じた特別講師によるオンライン授業・講演など一斉学習としての活用に加え、個人学習やオンライン英会話、病気療養児や長期間欠席児の学習機会の確保等で日常的に行っている。
草村大成町長は「情報通信基盤を構築することが必要と考え、現場を信じて予算を確保している」、佐藤増夫教育長は「確かなビジョンを確立し、それを皆で共有し、教員が安心して取り組めることが重要。『教育は人なり』。教職員ファーストで『風を興す』、時流を見据えた確かな教育ビジョン(高森町新教育プラン)で『風を読む』、町を挙げて教育改革を進める『風に乗る』ことを目指す」と話している。
高森町教育の情報化推進協議会を組織し、東京工業大学清水康敬名誉教授、東北大学堀田龍也教授、宮崎大学新地辰朗理事・副学長、中村学園大学山本朋弘教授など有識者から継続的に支援を受けている。
また、高森町教育研究会を組織し、全員研修会を行っている。
現場の教員や管理職の声を紹介する。
町校長会会長で高森中学校の栗原校長は「GIGA配備後、授業と家庭学習をつなげることに意識して取り組んでいる。かねてよりICT活用は行っているが、クラウド活用で特に家庭学習や協働学習が変わったと感じている。児童生徒はグループの仲間と共有してスライドにコメント機能を使って書き込み話し合うことを楽しんでいる」、高森中央小の小林教諭は「これまで、家庭の学びは登校して提出しないとわからなかった。この2年はクラウドに保存できるようになり、家庭での取組をすぐに授業に活かせるようになった」と話している。
また、高森町の実践について中村学園大学の山本朋弘教授からは「主体的な学びを実現するためには、授業時間内では不足。休み時間や家庭学習で継続していく必要がある。それがクラウド活用により可能になった」と評価を受けた。
まだ教員主導のICT活用も見られるため、今後は「自立した学習者」育成に注力するための単元デザインを検討中だ。
新たな取組として2023年度より、公立高校初のマンガ学科を高森高校に新設するにあたり2021年9月、高森町・県教育委員会・高森高校・コアミックス連携協定を締結した。
町営寮を整備し、全国から若い人材を受け入れ高森で育成し、エンターテインメントに関する地域産業の担い手を養成。マンガ産業の世界的な恩恵を地域へ還流すると共に教育施策による人口増を目指す。
【第91回教育委員会対象セミナー・鹿児島:2022年10月11日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年11月7日号掲載