第91回教育委員会対象セミナーを10月11日、鹿児島で開催。1人1台端末活用について鹿児島県教育庁、武雄市教育委員会、久留米市教育委員会、高森町教育委員会が報告。1人1台端末活用のアップデートについて山本朋弘教授が提案した。
2010年から1人1台端末の導入を始めている佐賀県武雄市(小学校11校・中学校5校)の徳永貞康教育監は「ICTは新しい授業デザインを構築するための『十分条件』ではないが『必要条件』」と話す。
「令和の日本型学校教育の構築を目指して」(答申)の武雄市版として「未来を創る武雄の教育」を2021年4月に公表。これまで武雄市が10年間取り組んできたICT活用を個別最適で協働的な学びに進めるため、市民に向けて宣言した。
学習指導要領改訂のポイントには「これまでと全く異なる指導方法を導入しなければならないと浮足立つ必要はなく、これまでの教育実践の蓄積を若手教員にもしっかり引き継ぎつつ、授業を工夫・改善する」とある。これを誤解して「これまで通りの授業にICTを追加すれば良い」と考える教員もいるのではないかと危惧している。浮足立つ必要はないが、学習指導要領を実現するために教員が支援者としての役割を担う、という意識変革は必要だ。ICTを活用しただけで「個別最適な学び」「協働的な学び」ができるわけではなく、教員は新しい授業デザインを念頭に置きながら「指導者」から「ファシリテーター」へ変わる必要がある
目標は「持続可能な社会の創り手となる子供を育む」ことにある。そこで市の研修会では、実現したい授業とはどのようなものか、そこにどうICTを活用するかについて繰り返し伝えている。
これまで本市ではAndroid端末やiPadを使ってきたが、GIGAスクール構想ではChromebookを導入。GoogleClassroomをプラットフォームとして運用している。整備の際に考えたことは3つ。
アプリはクラウドで運用すること、デジタルドリルを導入すること、授業が特定アプリに依存しないように基本アプリで取り組めるようにすることを考えて決めた。
新しい授業デザインを追求する学びが始まっている。児童生徒が自らの学習を自ら選ぶ機会を増やすことで、自己調整力が育まれるのではないかと考えている。事例をいくつかを紹介する。
入学式の翌日から休校になった市内のある小学校では、メールで休校を連絡すると共に、学校に端末を取りに来るように伝えた。ログイン方法とオンラインミーティングを練習し、翌日から児童は家庭からログイン。担任が端末を持ち歩いて学校探検を行った。休校中もコミュニケーションできたことで、どの児童も休校明けに元気に登校した。
1年生は夏休みに絵日記を書いている。それを今回は事前にスピーチを録画。児童は、聞きたいスピーチを2人以上選んでスピーチを聞き、感想を伝えた。
6年算数では、板書を写真で保存・共有。ふり返りに活用している。
3年算数では、数図の操作を動画でキャプチャし、動画を見せながら考えを説明。各自の説明動画を教員に提出している。
4年国語では、事前に家庭学習で学習者用デジタル教科書のワークに挑戦。授業で自分が何について取り組みたいのかを4つの選択肢から選び、グループに分かれて取り組み、共有・交流している。
美術では制作過程の記録や作品のふり返り・次回取り組みたいことを作品の写真と共にスライドに記入している。
英語では、文法解説の動画視聴や音読録画を宿題としている。授業では、ある程度文法を理解している前提で、生徒の質問から授業を開始。音読録画については、学習者用デジタル教科書で練習することができ、何度録画しても良いので、自分の判断で繰り返し学習することができている。
昨年8月には中学生が「中学生武雄の子ども会議」を実施。今回のテーマは新幹線開業を機に武雄の良さをアピールするパンフレット制作だ。県立中学を含む全6校から各3名が集まり、学校の壁を越えてグループになり、パンフレットを制作。同期・非同期で作業を進めた。
【第91回教育委員会対象セミナー・鹿児島:2022年10月11日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年11月7日号掲載