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教育ICT

自分で考え、自分で解くことに時間をかける 協働的な学びイコール話し合いではない<中村学園大学教育学部 教授 山本朋弘氏>

2022年11月7日
第91回教育委員会対象セミナー・鹿児島

第91回教育委員会対象セミナーを10月11日、鹿児島で開催。1人1台端末活用について鹿児島県教育庁、武雄市教育委員会、久留米市教育委員会、高森町教育委員会が報告。1人1台端末活用のアップデートについて山本朋弘教授が提案した。


中村学園大学教育学部 教授 山本朋弘氏

中村学園大学教育学部 教授 山本朋弘氏

山本朋弘教授は11台端末の活用アップデートに役立つ考え方と事例を報告。「端末が手元に届いたことで、児童生徒の選択肢が増えた。ノートに手書きなのか、端末に書き込むのか、板書を写真撮影するのか。状況により柔軟に行うことが重要」と話す。

…◇…◇…

個別最適な学びと協働的な学びの関係

協働的な学びとは、イコール話し合いではない。協働的な学びが充実しているか否かは、個人の思考が深まったか否かにある。

協働的な学びを充実するためには、個の時間をしっかり確保して自分の考えを練り上げることが重要で、ここでクラウドをうまく使うことがポイントになる。

それぞれの考えをデータで共有し、他の人の考えを見ながら各自がしっかり考察しているのであれば、話し合いや発表が介在していなくても協働的な学びといえる。

これを理解していない授業がまだ多いと感じる。

深まらない話し合いに悩んでいるのであれば、データを共有してそれぞれがじっくり考える時間を確保すること。共有に値しない考えしか出ていない、と思う段階であれば、共有するに値する個人の考えを深めることに時間をかけ工夫することだ。それがうまくいくと、共有も協働的な学びもうまく動く。

ところが子供に任せて進むようになると「自分の仕事がなくなる」と、せっかく挑戦したのに授業を元に戻してしまう教員もいる。子供への説明が自分の最大の仕事と考えているのだ。

子供の思考を深めることが教員の仕事である。その思いが確立していないと、子供に任せたとき教員が何をすべきかがわからず、元に戻ってしまう可能性がある。

ポイントは授業外や家庭での活用

子供が主体的になること、子供の学びを中心に考えると、授業と授業外は区切ることが難しくなり、授業外活用が重要になる。

調べ学習や発表資料の作成を行っているのであれば、休み時間や放課後、もしくは家庭でも取り組みたくなるのは自然だ。

リコーダーと端末を持ち帰って練習し、録画して提出することも簡単にできる。家庭にインターネット環境がなくても、録画なら情報端末上でできる。録画は学校で提出すれば良い。

教員は1人ひとりの音を聞いて評価できる。英語のスピーチも同様だ。

授業外の取組が充実していくと授業の質が高まる。

端末の持ち帰りを各自の判断に任せている学校もある。その場合の管理には様々な方法があるが、石川県立金沢錦丘中学校・高等学校では、各自の名前タイルを黒板に貼っており「持ち帰りは緑」「学校保管は黄色」とひと目でわかるようにしていた。

持ち帰り学習ではデジタルドリルに取り組んでいる学校が増えている。

これも、ドリルをやらせっぱなしでは、子供はできる範囲でしかしない。履歴を活かして教員が手立てを考えることに、デジタルドリルの意味がある。

効果的な活用には二段階ある

11台端末の効果的な活用には大きく2段階ある。本物に触れる機会の確保はもちろん重要だが、ふり返りや編集、共有等、明らかにデジタルに利便性があるものも多い。

第一段階が「限られた学習時間を効率的に運用する」こと。同じ作業だが紙よりも便利、という活用で、判断しやすいはずだ。

第二段階が「資質・能力を育成するためにより効果的に運用する」こと。これは第一段階よりも時間がかかる。各教科の目標に応じて、取り入れられる箇所から進めていくしかない。いくつかの事例を紹介する。

算数・数学ではグラフ作成やベクトル、フローチャートで解決する等、様々なツールを活用でき、かつシミュレーションしながら考えることができる。全国学力・学習状況調査ではプログラミングの出題もあった。これらツールを使って教員が教えるのではなく、自分で考え、自分で解くことに時間をかけることに大きな意義がある。

外国語活動・英語では、児童生徒が端末等を用いて発表する、発話や発音を録音・録画する、キーボード入力で英文を書く、電子メールやSNSを用いて英語でやりとりする、遠隔地の児童生徒と英語で交流する、遠隔地の講師やALTの授業を受ける等で活用できる。前述の金沢錦丘中学校・高等学校では、自分で考えた英文をキーボードでスムーズに入力していた。中学生で大人以上にスムーズに英文を入力できるまで進んでいる学校もある。

図画工作・美術では、表現及び鑑賞を支援。かつICTとクラウドを使ったやりとりもできる。作品に関する情報検索や意見交流、自分の作品の過程の記録等も考えられる。

小学校音楽も同様に、合唱や伴奏の支援、歌唱や演奏の記録、楽器を使用しない旋律づくり等に活用できる。これは楽器が苦手な子供が音楽好きになる可能性がある。音楽アプリでは「日本の音階しか使えない」等の設定ができるというメリットもある。

このほか、国語や算数・数学、体育、理科等すべての教科で端末を活用することができる。文科省Webにも様々な事例が蓄積されているのでぜひ積極的に取り組んでほしい。

【第91回教育委員会対象セミナー・鹿児島:2022年10月11日】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2022年11月7日号掲載

 

  1. 鹿児島県教育庁 義務教育課 課長 加藤晴彦氏
  2. 中村学園大学教育学部 教授 山本朋弘氏
  3. 武雄市教育委員会 学校教育課 新たな学校づくり 教育監 徳永貞康氏
  4. 高森町教育委員会 教育推進員 古庄泰則氏
  5. 久留米市教育委員会 教育ICT推進課兼教育センター 指導主事 関和浩氏
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