10月19日、仙台市内で第83回教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想ICT機器の整備・活用」を開催。宮城県内及び近郊から教育委員会や小中高等学校教員が参集し、熱心に聴講した。
仙台市ではGIGA端末としてChromebookを配備し、ネットワーク回線も増強した。開校7年目で1056人・35学級の仙台市立錦ケ丘小学校には、ChromebookのWi-Fiモデル1028台、LTEモデル111台、計1139台が配備。それに加えて前回配備のiPad80台(PC室)、ノートPC40台がある。文部科学省ICT活用教育アドバイザーでもある菅原弘一校長は同校の活用について報告した。
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GIGA端末が配備されたのは昨年12月で、充電保管庫は教室分あるが、情報端末持ち帰りも1年生から実施している。
従来の授業の延長としては活用頻度が上がっており、児童1人ひとりの考えや思いを共有する取組もよく見られるようになっている。
児童は情報端末を使って調べたいと思ったときに調べたりレポートを書いたり、意見交換したり、プレゼンテーションを行ったり、英語のプレゼンテーションを録画して振り返ったり、振り返りシートをデジタルで配布して回収、添削したり、毎時間何かしら情報端末を活用している。
教材の動画・アニメーション視聴も、これまでは教員のタイミングで行っていたが、現在は児童それぞれのタイミングで行うことができる。修正しやすい、再利用できるというメリットは大きく、「勉強が楽しくなった」「キーボードが打てるようになってうれしい」という声は多い。端末上での意見交換のほうが好きであるという児童もいる。
AIドリルも導入。使ってみると、すき間時間にも取り組むことができ、教科書と行き来することができて、使い勝手は良いと感じている。
今後の課題は、児童が自分の興味関心を活かしながら学びを深めること、自ら学びとること、協働しながら創り出すなどの児童主体の活用など。クラウド活用のメリットを生かすには従来通りの授業デザインや情報教育観からの脱却が必要ではないかと考えている。
そんな中、情報端末の持ち帰りが日々の学びに馴染むことで、学校での学びと家庭での学びがつながり、それが授業に変化をもたらしている。
教員は、GoogleClassroom上に課題を出し、児童は自宅で課題に取り組む。家庭科の課題「自宅でやったお掃除チャレンジ」で児童は、様々な「掃除」の様子を楽しんでClassroom上にアップし、共有しており、学校ではそれをもとに授業を展開。この流れが日常化することの学びに与える影響は大きい。
6年社会では「教える」授業から「考える」授業とするため「振り返り」に時間を確保。これまでの「導入5分・展開35分・まとめ5分」から「導入5分・展開20分・まとめ20分」への改善に挑戦。教員は、事前にGoogleスプレッドシートを配布して教科書から読み取れる内容を表にまとめることを課題とした。教員は皆の理解状況を一覧でき、児童はスプレッドシートを共有して互いの意見や考えを読み合うことができる。その上で、質問や討議を展開で行った。
振り返りの時間を長く確保したことにより入力スキルも向上。紙のワークシートに比べ、児童の記述量が増えている。
学校と家庭がつながった学びは、非常時のオンライン学習にも有効だ。
最近、「ノートをとらなくていいのですか」と聞かれることも増えている。
学習課題を最初に示してノートに書き写すことは一般的に行われているが、これもClassroom上に配信すれば良いのではないか。板書をカメラ機能で撮影することを認めても良いのではないか。板書を写すことに時間をかけるより、考える時間、話し合う時間、まとめる時間に時間を確保した方がよいのではないか。手書きではなくデータであれば、今後はデータを蓄積・分析して学びに活かすことができるのではないか等、GIGAスクール構想は、これまでの「当たり前」を再考する契機となっている。
教育観や授業観のアップデートは、そう簡単に浸透するものではない。しかし文部科学省では2021年、「新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業」の成果を踏まえて『学校における先端技術活用ガイドブック(第1版)』をまとめており、デジタル庁でも教育データ利活用の仕組みの構築を急ピッチで進めている。将来的に起こり得ることを想像しながら、授業改善や環境構築を進めていきたい。【講師】仙台市立錦ケ丘小学校校長・菅原弘一氏
【第83回教育委員会対象セミナー・仙台:2021年10月19日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年12月6日号掲載