10月19日、仙台市内で第83回教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想ICT機器の整備・活用」を開催。宮城県内及び近郊から教育委員会や小中高等学校教員が参集し、熱心に聴講した。
文部科学省初等中等教育局に新設された修学支援・教材課でGIGAスクール推進等を担当している水間玲氏は1人1台端末の本格運用に向けた国の推進方策を説明した。
◇・◇・◇
調査(※)によると7月末までに全国の小中学校共に96%以上がGIGA端末の利活用を開始。端末持ち帰りついては、非常時6割以上、平常時3割以下と、まだ浸透しきれていない状況だ。端末の破損・紛失台数は0・2%であった。
整備当初から円滑な運用や活用は難しいが、それに向けた改善や見直しの継続が重要だ。積極的な活用を前提としつつ、留意すべき事項を関係者間で理解しながら取り組んでいただきたい。現在文部科学省では、GIGAスクール構想で配備された1人1台の情報端末の本格的な運用を推進するため、推進方策を示し、周知に努めている。「GIGAスクール構想 本格運用時チェックリスト」(2021年3月12日付)や保護者等との間で事前に確認・共有すべきポイント等を整理し、教員の授業用端末の配備やデジタル教科書・教材の活用、情報モラル教育の留意点、円滑な活用に向けた改善の継続などを示した。随時、更新を行っていく予定である。
ネットワークの課題も多くの自治体から報告を受けている一方で、改善も報告されている。インターネットへの接続方法には、大きく分けてセンター集約型の接続と各学校が直接接続する方法があり、調査(※)によると学校から直接接続の割合が増え(前回971自治体・1万3323校、今回1132自治体・1万6628校)、1Gbps以上で接続している割合が増えている(前回224自治体・今回471自治体)。センター集約接続の場合も1Gbps以上の接続が増えた(前回204自治体・今回253自治体)。
大量の端末が接続する環境になった昨今、円滑な通信のために必要な環境が確保できているかどうかについて、学校設置者が契約しているネットワーク環境構築事業者に相談し、事前評価(アセスメント)を実施し、それを踏まえて適宜改善することを推奨している。調査(※)によると、983自治体がアセスメントの予定がないと回答。アセスメントをしないことで、インターネット接続の問題が改善されないまま活用している設置者があるのではないかと懸念している。ネットワーク接続の問題を解決するためには、専門家の知見と協力が必要である。各設置者は、設備部門と利活用部門の双方で協力して進めてほしい。
アセスメントの際の参考となるよう、(一社)日本インターネットプロバイダー協会が「ネットワークアセスメント項目」を整理している。国としても「学習系ネットワークにおける通信環境の円滑化」(学校施設環境改善交付金)(1/3補助)の措置やGIGAスクールサポーター配置支援事業(1/2補助)で支援している。なおGIGAスクールサポーターについては、今年度中に再募集の予定。
高等学校のクラウド活用を前提にした学習用端末配備も促進する。高等学校の端末は、各校の状況等により、調達、BYOD、事業者からの貸与や贈与など様々な方法による確保が予想されるが、いずれの場合も端末がネットワーク接続などを想定してセキュリティ対策の考慮が必要だ。
本年5月に設置した「GIGAスクール構想に基づく1人1台端末の円滑な利活用に関する調査協力者会議」において、利活用状況の調査、先行的な調査研究事例の整理、セキュリティ分野のヒアリング等を行い、基本的な考え方を整理。管理運営や指導のポイント、家庭への持ち帰りを含む学校から情報端末を持ち出す際のポイントを整理する。
StuDX Styleでは事例や一日のモデルシーンを紹介。初期の指導の在り方や学習環境、教科活用等の優良事例など参考にしてほしい。GIGAスクール運営支援センターの設置や各種研修、今後のネットワーク構成を見据えた実証事業なども予定しており、現在、他部局と調整中だ。(※)GIGAスクール構想に関する各種調査▼公立小中学校における端末の利活用状況(2021年7月時点▼公立高校における端末の整備状況(同8月時点)▼校内通信ネットワーク環境(同5月時点)▼自治体におけるGIGAスクール構想に関連する課題(同)▼統合型校務支援システムの導入状況(同)【講師】文部科学省初等中等教育局 修学支援・教材課GIGAスクール推進チームリーダー(情報教育振興室長)水間玲氏
【第83回教育委員会対象セミナー・仙台:2021年10月19日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年12月6日号掲載