11月1日、大阪市内で「第81回教育委員会対象セミナー GIGAスクール構想」が開催され、大阪府内及び近郊の教育委員会と教職員が参集。校内ネットワークの改善や中学校の取組に関心があるという教育委員会や教職員が多かった。
2021年度藤井寺市学力向上推進事業・大阪府スマートスクール実現モデル校推進事業の推進校である藤井寺市立藤井寺中学校(大阪府)の印南航氏は、GIGA端末配備の2年前から始まった同校の1人1台端末活用について報告した。
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2018年度までに全教室に大型提示環境(短焦点プロジェクターとホワイトボード)が配備されたことから、2019年度は「ICT機器を用いた効果的な発表授業の研究」というテーマで研究授業を2回実施。2020年度は1人1台端末配備前だったこともあり、「効果的なICT利用による知識の再構築および言語能力の育成」として研修を進めた。本テーマで、パナソニック教育財団から研究助成も受け、生徒用iPadを10台配備。さらに市の備品費で購入したiPad8台、PC教室のPC40台を利用して、生徒が主体的に学ぶことを意識して取り組んだ。
5月には各教科HPをGoogleSiteで開設。休校期間中のオンライン学習に利用した。7月の第1回公開研究授業では1人1台のiPadを利用し、環境問題について英語で意見交流を実施。ALTとSkypeでやりとりした。
11月の第2回研究授業ではWindowsPCを1人1台で活用。数学「比例と反比例」で、線香が燃え尽きる動画をロイロノート上で全員に配布して、燃え尽きるまでの時間を予測。クラウド上で意見交流をしながら比例概念の理解を深めた。
校内研修会では、メタ分析について仲矢史雄教授(大阪教育大学)により学んだ。また、タブレットドリルやARアプリ「マチアルキ」、ロイロノート等の利用研修を屋台型で実施。講師はそれぞれのツールで実践している教員で、聴講者は興味あるブースで学んだ。
外部研修会にも積極的に参加。関西教育ICT展や、他校の研修会・研究会(主にオンライン)に参加した。
この2年間の研究実践により、クラウドツールの活用が浸透。「クラウドツールによる教材提示」「個人思考及びグループ思考」「クラウドツールで他者の意見の取り入れ」「自分の意見の再構築」「再言語化」という流れが授業スタイルとして定着。ICT環境の全教員の積極的な活用につながった。
これらを踏まえ、2021年度の研究テーマを「ICTを活用した効果的な評価法の研究」とし、生徒が言語化した後の評価法について研究中だ。教員のICT活用レベル別のガイドブックの作成、ICT授業の効果的な評価方法の確立、タブレットドリル等を利用した個別最適な学びについて進めている。現在、藤井寺市としては、Microsoft365、まなびポケット、SkyMenuクラウド、タブレットドリルを導入。本校ではこれらに加え、ロイロノートやGoogleWorkspace(一部教科で利用)、Quizizz、Mentimeter、啓林館ぴたサポアプリ等も活用している。
今年度は、ICT生徒委員会も発足。生徒が主体的に端末活用のルールを考えるためのものだ。「授業中に関係のないサイトを見たり、関係のない画面を開かない」「休み時間、学習に関係する利用以外でPCを使用しない」「他人のPCを勝手に触らない」等8か条を決めた。
今年度は学期に1回、公開授業週間を設定。全員が公開授業を行っている。各教員の実践を記録に残し、達成度を示すため、研究紀要も作成。公開授業や研究授業の様子を積極的にWeb等で発信している。
GIGA前2年間の取組が今年度の活用につながっている。できないと思わず、できる方法を皆で模索すること、複数教員で先進校を視察して学ぶこと、そのために校務分掌を改編して業務を効率化すること、積極的に情報発信して外部から意見や支援を得ることが重要であった。【講師】藤井寺市立藤井寺中学校教育研究部長・印南航氏
【第81回教育委員会対象セミナー・大阪:2021年11月1日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年12月6日号掲載