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教育ICT

小規模自治体のメリットを生かす 児童生徒9割「iPadは学習に役立つ」<摂津市教育委員会学校教育課指導主事・宗木俊憲氏>

2021年12月6日
第81回教育委員会対象セミナー・大阪

11月1日、大阪市内で「第81回教育委員会対象セミナー GIGAスクール構想」が開催され、大阪府内及び近郊の教育委員会と教職員が参集。校内ネットワークの改善や中学校の取組に関心があるという教育委員会や教職員が多かった。


摂津市教育委員会学校教育課指導主事・宗木俊憲氏

摂津市教育委員会(小学校10校・中学校5校)は小規模自治体のメリットを生かし、情報端末(iPad)とGoogleWorkSpace、各種ツールの配備・活用を推進している。宗木俊憲指導主事は「11台環境で、学び方が変わった」と報告した。

◇・◇・◇

20207月にICT教育推進リーダーを4名指名。保護者向けリーフレットを作成し、11台端末活用は9月から小6・中3より順次始め、12月には全小中学校の配備が完了した。自宅でiPadやスマートフォンで遊んでいる児童生徒は多く、子供に端末を渡した当初は「授業中に端末で遊ぶのではないか」という声もあった。しかし20215月に実施した本市の調査において、小中学校ともに9割を超える児童生徒が「情報端末は学習に役立っている」と考えており、配備以降、学習に活用されていることがわかる。また、調査によるとテストの正答率が高かったのは使用時間が「30分以上・3時間以下」の層であった。OECDPISA2018調査でも、使用時間が4時間を超えると平均点が低下する傾向にあり、学習に適切な活用割合があることがわかる。

iPadが意欲向上に効果

主体的な学びにはモチベーションが重要だ。モチベーション向上のため教員は授業の構成を工夫する。しかし得意不得意もあり、教科による差も出る。これが情報端末により、子供の最低限のモチベーション維持が期待できる。

iPadとほぼ同時に活用を開始したのが授業支援ツール(ロイロノートやミライシード等)。紙ではなくデジタルでワークシートを配付・回収するだけでも、授業に向かうモチベーションが上がる。ノートや作品も写真撮影して提出しているので、返却する必要がない。

■全員一斉にスピーキングテスト

本市での活用の様子を紹介する。

教員はiPad用アプリ「クラスルーム」で、指定したアプリのみ起動するようにしており、これで児童生徒の様子もモニタリングできる。

ある小学校では夏休み、「摂津市で紹介したい写真を撮影し、それを英語で紹介する」課題を出していた。

英語の授業では、イヤホンを使って個別にリスニングを行っている。スピーキングテストも、イヤホンのみで全員一斉に行っており、時間削減につながっている。さらに、個人や仲間で考える時間の確保や情報共有のしやすさなど様々なメリットがある。イヤホンやタッチペンは個人購入で行っている。

プログラミング教育も加速しており、次年度から活用するプログラミング教材を各種検証中だ。設定や準備に時間がかからないロボットプログラミング教材で「小学校低学年からやってみたい」と声が上がっている。

各校では職員会議や学年会議の資料をPDF等で共有。保護者への連絡や学校便り等もメールで配信している。

アンケートや保護者面談の日程調整等もGoogleフォーム等で行っている。

健康観察アプリ(LEEBER)も導入。保護者と教員に喜ばれている。本アプリでは、毎朝7時に保護者のスマートフォン等に通知が届き、保護者はそれに返信をする。費用は1人あたり月11円で、市が負担している。

■教員研修もオンラインで

昨年度、オンライン上で研究発表会を行っており、その時の経験を活かしてオンライン研修を行っている。授業動画を事前に撮影し、編集。それを参加者は事前に視聴して当日、研究協議を行うという内容だ。

各校の意欲が高いことは摂津市の強み。それをさらに発揮できるように、良い取組を広く共有する機会を増やしていく。今後は、オンラインで研究発表会を行う学校もあると聞いている。

各校のICT教育推進リーダーの働きは大きい。月1回、連絡会議を行っており、様々なチャレンジのきっかけとなっている。

市教委として、ICT教育推進リーダーからの要望も聞き入れ、先進校への視察や不足している機器整備等を積極的に行っている。

■端末持ち帰りから保護者の協力獲得へ

端末持ち帰りの際の予想し得るトラブルについてはフローチャート化して掲載。初日はトラブル報告もあったが2日目以降は学校の頑張りを応援する声が増え、2学期以降のオンライン授業本格実施に向けて、保護者の協力が得られている。

主にGoogleMeetを使い、オンライン授業を3日間にわたり行った。アプリ版やブラウザ版の違いやオンライン授業のいくつかのパターン、板書やプリントの例などを各校に案内した。

休み時間もオンラインでつながって教員が子供たちとコミュニケーションをとっているクラスもあったようだ。

■情報活用能力 体系表を策定中

教育委員会として新しく、広報活動推進員を配置し、様々な学校の取組の様子を写真や動画で撮影し、YouTubeWeb等で発信している。また、オンライン授業の際に必要であると感じたiPad用固定スタンドや教員用イヤホンマイクを配備する。

現状、iPadログイン、GoogleWorkspace、ミライシード等4種類のID・パスワードの入力・管理が必要。そこでセキュリティポリシーGIGA版についても策定。校長会で共有する。情報活用能力体系表も策定中で、近日中に公開予定だ。【講師】摂津市教育委員会学校教育課指導主事・宗木俊憲氏

【第81回教育委員会対象セミナー・大阪:2021年11月1日】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年12月6日号掲載

  1. 摂津市教育委員会 学校教育課指導主事・宗木俊憲氏
  2. 西宮市教育委員会 教育研修課指導主事・吉田将司氏
  3. キートンコンサルティング株式会社 代表取締役・松浦龍基氏
  4. 大阪市立新巽中学校 教務主任・山本昌平氏
  5. 藤井寺市立藤井寺中学校 教育研究部長・印南航氏
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