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教育ICT

複数担任制・タテ持ち型編成・単元テスト導入 予測不可の時代を生き抜く力を育む<大阪市立新巽中学校教務主任・山本昌平氏>

2021年12月6日
第81回教育委員会対象セミナー・大阪

11月1日、大阪市内で「第81回教育委員会対象セミナー GIGAスクール構想」が開催され、大阪府内及び近郊の教育委員会と教職員が参集。校内ネットワークの改善や中学校の取組に関心があるという教育委員会や教職員が多かった。


大阪市立新巽中学校教務主任・山本昌平氏

21回ちゅうでん教育振興助成、第45回パナソニック教育財団特別研究指定校でもある大阪市立新巽中学校は、学校改革に取り組んでいる。同校で教務主任・研究主任を務め、Google認定トレーナー、Intel Master teacherでもある山本昌平教諭が報告。

◇・◇・◇

■公立教育改革で育む「しんたつマインド」

2016年から複数担任制を導入し、2018年からタテ持ち型編成として全教員で全生徒を見守る学校作りに取り組んでいる。そのため、本校の授業は835分にスタート。また、定期テストを見直して単元テストを実施。パフォーマンス評価に取り組んでいる。目的は、予測不可能な時代を生き抜く力を育むことにある。

そんな中、11台の情報端末(Chromebook)環境が配備された。

現在多くの学校で、ICTについて主体的な活用が推進されているが、一方で活用方法や活用の意義が共有できずに個人差が生まれているケースもある。それは何故か。

担任を1人ですることや、学年に携わる教員を限定するといった従来型の組織が、課題を共有しにくい環境や協働を必要としない環境を生み出しているからではないかと考えた。

そこで、これまでの枠組みを変更。それが複数担任制や授業のタテ持ち型編成、定期テストの見直し等だ。

また、生徒像として「自分を磨き続ける生徒」、「共に持続可能な社会を探究する生徒」、「他者と関われる生徒像」を『しんたつマインド』として共有。そんな生徒を育む教師像として「全教員で全生徒を信じて見守る」「子供と共にワクワク・いきいきする」「新しいことにチャレンジする」「人権課題に毅然として向き合う」ことを共有して取り組んだ。

定期テストは再編して単元テストとし、評価は、個々の成長に焦点を当てている。本校ではこれを「Bテスト」「Sテスト」「Pテスト」と読んでいる(B=紙テスト S=技能面テスト P=パフォーマンス課題)。

■教員研修はワークショップで

『しんたつマインド』育成に向け、21世紀型スキルから「しんたつ11のスキル」(※)をまとめ、それぞれの授業でどのスキルを育成できるのかを明確にした。

次に非認知スキルに焦点を当て、対話を通じたワークショップ形式の教員研修を行った。これは201910月から20201月の間に実施。テーマは次の6つ。▼学力を考える ▼しんたつオンラインの実践知を探る ▼ICT類型としんたつスキル ▼パフォーマンス課題を作ろう(複数回)▼しんたつ勝手にリフレクション(2回)

これらの取組により授業も変わった。

例えば英語では、1年次から学期に1回、英語を使った学校紹介ムービーの作成や音楽劇、校内スピーチコンテスト等に取り組んでおり、中学3年次では、これまで身に付けてきた英語力を駆使して「英語で卒業文集を作成し、『今の自分』を発信しよう!」という問いを立てて取り組んだ。Googleドライブに個人写真を取り込んでプレゼンテーションに盛り込んでスピーチしている生徒が多く、互いに知らなかった一面を知ることができた。また、自身のコンプレックスや人生観、家族や周囲への感謝などを皆の前で語る姿が見られた。日本語だと語りにくい内容にも言及でき、初めて自分の本当の夢を話す生徒もいた。(※)しんたつ11のスキル∥内発的動機/自己管理力/自己有用感/持続的探究/問題解決力/批判的思考/社会的責任/合意形成力/多様性受容/情報活用力/表現力

■コロナ対応はハイブリッド授業で

登校したい生徒、自宅にいたい生徒、双方が不安を感じずに学習できる環境が重要であると考え、コロナ禍のオンライン授業はハイブリッドに挑戦。普通教室で行う通常授業に加え、サテライト教室を設置して密を避け、かつ自宅にも授業を配信した。

大型提示装置(プロジェクター型)に提示して行う場合は、カメラの撮影範囲を意識して端末上でも見やすいように配慮。デジタル教材を画面共有して授業を進める、プリントをカメラ等で取り込んで書き込みながら説明するなど、教員や教科により様々な工夫が見られた。

■eスポーツ大会で新たな個性が輝く

20212月、当時の2年生(全78名)は「脱獄ごっこのeスポーツ大会」開催に挑戦した。

生徒が司令塔、実況、選手、広報を務め、大会をマネジメントしていった。大会後、「ゲームは悪か」をテーマに研究発表を行った。司令塔役では、予想外の生徒が躍動し、学年をリード。従来の枠を超えた取組で、予想を超えた個性が輝くことを実感した。実況を担当した生徒は、臨機応変に他者と協働しながら改善に努める姿があった。初の取組のため、新しいものを受け入れる素養、他者の意見を真剣に聞き、考える様子も見られた。今後、本取組を他学年でも継承し、新しいカリキュラムとして横展開していきたいと考えている。【講師】大阪市立新巽中学校教務主任・山本昌平氏

【第81回教育委員会対象セミナー・大阪:2021年11月1日】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年12月6日号掲載

  1. 摂津市教育委員会 学校教育課指導主事・宗木俊憲氏
  2. 西宮市教育委員会 教育研修課指導主事・吉田将司氏
  3. キートンコンサルティング株式会社 代表取締役・松浦龍基氏
  4. 大阪市立新巽中学校 教務主任・山本昌平氏
  5. 藤井寺市立藤井寺中学校 教育研究部長・印南航氏
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