第82回教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」を10月15日、札幌市内で開催。道内から100人を超える教員・教育委員会が参集した。当日はGIGAスクール構想スタートから現在までの運用や1人1台端末活用について、北海道教育委員会、札幌市教育委員会と道内教員2名が報告した。
北海道教育大学附属札幌小学校では2020年2学期からGoogle Workspaceの運用を始め、翌年5月より情報端末(Chromebook)を全児童に配備。子供自らのアイデアを発揮するツールとしての活用が始まっている。河本岳哉教諭が報告した。
2020年3月の臨時休校時、本校では家庭にある環境を利用したオンライン学習を行った。2学期にはアカウントを配備してGoogleWorkspaceの活用を開始。校務分掌にICT教育推進部を設置し、GIGA端末推進と保守点検を役割とした。
運用規則やセキュリティポリシーも大学連携で策定。
「情報の時間」を年間計画に設置して情報モラルやプログラミング教育が始まった。情報モラルはSNSノート(LINE)を前後期2時間で行っている。
校外学習が思うようにできなかった2020年度、3年社会では、子供は教室にいて教員がスーパーマーケットに行き、Zoomで生配信する試みを行った。バックヤードの様子も教員が配信。子供の質問を伝えてやりとりした。
5年社会ではJamボードで付箋を貼りながら意見を共有。活発な発言と意見交換が可能になった。6年英語では英語のオリジナル絵本を1年生のために制作した。
短歌の学習ではフォームで作品を鑑賞しあい、良さを話し合うことができた。道徳では、フォームを使うことで本音の話し合いが進むと感じた。
1年生は6年生に教えてもらいながら端末活用を学んだ。
情報端末を毎日使っていると主体的な活動が増えてくる。修学旅行後、児童は自らスライドを作成して発表資料を作成した。友達の忘れ物を写真付きで共有する子もいた。
学年集会はZoomを使って各教室で実施した。休んでいる子に授業の様子を伝えたいので板書を撮影したいという子もいた。
国語では給食の食べ残しについてアンケートを作成して調査。
運動会は1~3年生が午前中、4~6年生が午後で、保護者参観なしという異例の運用になった。そこで「もっと運動会らしく盛り上げたい」という意見が出、学級旗に寄せ書きをしたり、競技の説明CMをピクトグラムで作成したり、黒板アートを作成したり、紅組、白組それぞれの応援手拍子を録音して当日の応援替わりにしたり、オリジナルロゴを作成したりといった取組が始まった。
小学校の池をもっときれいにしたい、と考えた子供はメンバーをオンラインと全校放送で募集。すると、様々な学年の子が集まって池清掃を開始。HPも自分たちで制作していた。
手元に情報端末があると自分のやりたいことをかなえやすくなる、主体的な活動とはこういうことなのだ、と子供に教えてもらった数か月間であった。
バランスのとれた学習評価のため、多面的な評価のあり方を試行錯誤している。
学習者の作品や自己評価、授業改善に活かすためのeポートフォリオ評価表を作成。データベース化している。デジタル化することで保存しやすくなり、昨年の学びと今年の学びを接続しやすくなる。例えばハードル走の際、タイムを競うのではなく「昨年のタイムからどれくらい速くなったのか」を評価目標とすることができた。これは個人戦とチーム戦で行った。
クラス全体の思考の概念マップ作成も役立った。今皆が考えていることをテキストマイニングで可視化。何を課題としてどう解決していったのかについての振り返りを記録し、どのような言葉が頻繁に出ているのか、どの言葉とどの言葉がつながっているのか等を可視化した。これを毎時間継続することで見えることがある。チームの話し合いが活性化している、深まっている等だ。これを次の時間の学習目標作りや授業改善につなげている。
全員が作戦を考えてからコメントを付け合った上で話し合うと、運動が苦手で普段それほど意見を出さない子の意見にも注目することができ、振り返りにも活用できた。
自分たちで演技の動画を撮影し、ベストを選び、コメントをつけて提出。その子なりの見方考え方が表現でき、保護者にもその成長を見てもらうことができた。【講師】北海道教育大学附属札幌小学校教諭・河本岳哉氏
【第82回教育委員会対象セミナー・札幌:2021年10月15日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年11月1日号掲載