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教育ICT

よくある5つのご相談に回答 今の活用が次のBYOD移行に直結するく北海道教育大学附属函館中学校教諭・郡司直孝氏>

2021年11月1日
第82回教育委員会対象セミナー・札幌

第82回教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」を10月15日、札幌市内で開催。道内から100人を超える教員・教育委員会が参集した。当日はGIGAスクール構想スタートから現在までの運用や1人1台端末活用について、北海道教育委員会、札幌市教育委員会と道内教員2名が報告した。


北海道教育大学附属函館中学校教諭・郡司直孝氏

2013年度から11台端末(Android)活用を始め2016年度からChromebookを活用している同校には全国から視察が訪れる。当初から11台端末の活用推進を担当している郡司直孝教諭は「よくある質問」についての回答を報告した。

■端末が届いた。何から始めれば良いのか

「まず使ってみよう」という運用は、最初は良い。しかし何年生で何をしているのかを把握しないと、バラつきが出てしまい無駄が多くなる。そこで初期の段階で、全校的に体系的な方針を決めることをお勧めしている。本校では付属幼稚園から中学校まで情報活用能力体系表に基づき、ログイン、ローマ字入力、ファイル共有等どの単元で何をするのかについて策定した。最も重要なのは全校体制で児童生徒の実態を考えながら策定すること。組織全体で考えることが重要だ。他校の表をそのまま取り組むと、うまくいかない場合が多い。

■研修をどう進めるか

ICTスキルの向上はもちろん必要だが、デジタルネイティブの授業がうまいわけではなく、ICTは使っているものの、なぜここで共有するのか、アニメーション再生はここで止めた方が良いのではないか、と思うことも多い。そこで、これまでの実践を起点にすることをお勧めしたい。漠然とExcelの勉強をしても授業に役立つことは少なく、こんなことができると良いな、と思ったときに実践力が身につく。

ある学校の研修で、「ICTでこんなことがしたい」と思うものを書き出した後、グループで詳しい人に聞くワークショップを行ったところ、授業作りの話し合いが活発に進んだ。ICTはそれほど得意ではないとしても経験豊富な教員はここで重要な役割を発揮する。本校の職員室も同様の雰囲気があり、職員室の会話が情報端末活用を加速したと考えている。

■子供は端末で悪いことをしないか

これは、特に中学校教員に聞かれることが多い。もちろん、トラブルは起こる。その際の対応は2つある。

1つはシステム的な対応だ。本校では、全教員が管理権限を持つ運用とし、管理状態を変更したいときに担当に依頼しなくてもできるようにした。例えばWebページは基本的にホワイトリスト運用だが、総合的な学習の時間や社会の時間にオープンデータにアクセスしたいときには授業者が自分の判断でブラックリスト方式に切り替える。授業が終わった後に、ホワイトリスト形式に戻すこととしている。様々な時間にそれぞれの教員が変更しているので、万が一誰かがホワイトリスト運用に戻すことを忘れたとしても他の教員が戻すことができる。この運用では、例えば朝の会で生徒同士が勝手に打合せをしていた際にはその場で禁止することも可能だ。

MDM等で「時間を制限する」「アクセスできなくする」こともシステム的に可能だが「使わせない」ことは根本的な解決にならないので本校ではこの方法はとっていない。

もう1つは指導の工夫だ。教室の机の配置を工夫し、外向きロの字型に座らせて教員から画面が見えるようにする。また、生徒同士のコメントは必ず教員も閲覧できるようにする。何か問題が起きたときも「問題が起きた」と考えるのではなく、問題が見えるようになった、と考えている。これは、生徒と共に考える良い機会だ。教員がルールを決めるのではなく、生徒が自らルールを改正していくようにする。

ICTにネガティブな教員がいる

これも多くの学校から届く。まずは研修で教員に一定の理解を得る。

次に「そもそも論」と「やらざるを得ない環境づくり」だ。学習指導要領はこれまでと異なり「総則」の議論を10か月間行ってから「教科部会」が始まった。これまでの「教科ありき」ではない。これを重く受け止めるべきであり、子供に教科の力だけをつければ良いわけではなく、教科横断的な視点に立った資質能力育成が求められている。「自分の教科では必要ない」という考え方はあり得ない、というのが「そもそも論」だ。児童生徒が使うことが大前提、という点の浸透も必要。教員が講義する形式の授業で情報端末は不要なのは当然であるが、目指す学びを実現するための授業は教員の一斉講義ではない。

「やらざるを得ない環境作り」とは、例えば道徳では必ずGoogleフォームでアンケートを行う、提出物はオンラインで行い、教員はコメントをオンラインで行う、学級日誌も端末から入力・閲覧する、朝の会や行事の連絡等もオンラインで行う等、授業や校務での流れを決めることだ。本校では総合的な学習の時間に全員が論文作成に取り組む。テーマはそれぞれで、訪問先もそれぞれ異なる。その許可を電話で行うことは不可能で、メールで行うしかない。

BYODをどのように実現したか

本校では2013年、端末配備用の予算が大学より提供された。しかしiPad全員分を配備するには不足。そこで11台分の情報端末環境とするため、旧機種のAndroid端末を選択して配備。無線APも自ら設置した。活用は進んだものの2年程度で端末の充電がもたなくなり、OS更新もできなくなった。

そこで議論した結果、ネットワークとセキュリティに関する予算は学校が、情報端末は保護者負担とすることとし、保護者説明会も実施。外部専門家を依頼して世の中の流れについての講演も行った。約200家庭のうち約30家庭から同意を得られず、当初は学校所有の端末を貸与するなどしていたが、3か月後にはすべての家庭が端末を購入した。情報端末がなければ学校生活に支障をきたす、と理解したためであると考えている。

比較的スムーズにBYODができたのは、2013年からの11台情報端末を家庭でも学校でも使っていたことが最も大きい。

今、GIGA端末配備で活用に迷っている学校に伝えたい。今の活用状況が、数年後訪れる可能性が高いBYOD時代のスムーズな移行に直結している。年間数時間程度の活用であれば保護者はBYODに納得しないだろう。【講師】北海道教育大学附属函館中学校教諭・郡司直孝氏

【第82回教育委員会対象セミナー・札幌:2021年10月15日】

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年11月1日号掲載

 

  1. 北海道教育庁 ICT教育推進課ICT教育指導係長・荒瀬匡宗氏
  2. 札幌市教育委員会教育課程担当課・義務教育担当係長・指導主事・寺田晋哉氏
  3. 北海道教育大学附属函館中学校 教諭・郡司直孝氏
  4. 北海道教育大学附属札幌小学校 教諭・河本岳哉氏
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