教育家庭新聞は8月2日、愛媛県松山市でセミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」を開催。愛媛県での開催は初。夏休みということもあり小中高等学校教員が多く参集した。
愛媛県教育委員会は、全県立高等学校にGIGA端末を配備しており、松山南高等学校でも活用を開始した。対応準備及びこの4か月間の取組を含め、同校の課題研究とICT活用について重松聖二教頭が報告した。
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文部科学省・スーパーサイエンスハイスクール(SSH)は現在、218校が指定を受けているが、20年間連続して指定を受けているのは、本校を含めて2校のみ。さらに本校は、2020年度から先導的改革型の指定を受け、「新しい価値を創生する国際競争力を持った科学技術人材育成」に取り組んでいる。
SSHに伴い理数科では20年前から課題研究に取り組んでおり、国際連携・大学連携でハイレベル科学技術人材育成を目指している。理数科独自の科目や行事も多い。
普通科の課題探究が始まったのは2015年度からで、2020年度からはデータサイエンスの時間を設置。本校のデータサイエンスⅠは、各クラスの副担任が中心で行っている。
課題研究は、3年間で理数科6単位、普通科3単位。課題研究の成果発表の場として、全校生徒が、各研究発表大会やコンテストに参加している。課題研究に取り組んでから、普通科の生徒の国公立大学推薦入試の合格者は、2倍以上に増えた。
課題は、PC不足であった。
情報処理室にあるPC40台を27クラス約1070人の生徒が使用しており、論文等の提出締切時には生徒が集中した。
そこで、2019年度の教科横断型授業のスタート時、生徒間で情報共有するための端末が必要であると考え、iPad LTE版を1学年につき40台+予備機を3年リースにより導入。図書館に設置した。併せて教育支援アプリも導入した。
教科横断型授業では、家庭科と生物で、酵素に関する探究活動や地理と物理連携によるエネルギーミックスについての考察、保健・地理・数学が連携した「南海トラフ地震に備えた避難所提案」など20種類以上の教科連携が進んでいる。
端末不足は完全には解消しないが、2020年の学校休業時のオンライン学習や課題配信ではこのiPadと生徒のスマートフォン、教育支援アプリで対応できた。
本校独自でMicrosoft及びGoogleアカウントの配備や大型提示装置配備などGIGAスクール構想の準備を進めていたところ、2020年9月、県により1人1台端末の配備が決定。配備される端末がWindowsに決まった時点で、MicrosoftTeamsやOneDrive等の教員・生徒用マニュアル作りや研修など準備を進めた。
本年4月15日に1人1台端末が配備され、生徒は、OneDriveやMicrosoftTeamsの利用により、8クラスが同時開講で課題研究を進めることができるようになった。他のクラスの課題研究の内容が共有できるようになり、研究成果も、グループごとにデータで担当教員に送り、コメントを得るようになり、担当教員が丁寧に指導できるようになった。グループ活動も取り組みやすくなった。
課題研究の質も、明らかに向上。普通科の課題研究が理数科にもよい影響を与えており、科学系の全国コンテスト受賞者はさらに増えている。
普通科で取り組んだ課題研究では、バスケットボールの3ポイントシュートが試合へ与える影響についてデータを解析。これは「第9回スポーツデータ解析コンペティション中等教育部門」で最優秀賞を獲得。本年は国際統計ポスターコンペティション日本予選で、本校生徒が優勝して日本代表となり、世界大会に出場。生徒は愛媛県の農業活性化に関するデータを英語でまとめていた。
このほか産学連携で7か月にわたり「産学連携データマーケティングプログラム」も実施。海外の大学や県外の他校との科学交流でも端末が活躍。事前にMicrosoftTeamsで発表資料等を共有し合っている。
配備された端末は、約1・2キログラム。そこで生徒の荷物があまり重たくならないように配慮した。電子黒板は今夏、全教室に配備。課題研究がさらにやりやすくなる。ICT環境を与えると生徒の主体的・協働的な取組はどんどん進み、それに伴い授業改善も進むことを実感している。【講師】愛媛県立松山南高等学校教頭・重松聖二氏
【第79回教育委員会対象セミナー・松山:2021年8月2日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年9月6日号掲載