教育家庭新聞は8月2日、愛媛県松山市でセミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」を開催。愛媛県での開催は初。夏休みということもあり小中高等学校教員が多く参集した。
松山市教育委員会(小学校53校・中学校29校)は、全児童生徒約3万8000人分に予備機を含めて約4万台のWindows端末を配備。小田浩範指導主事はその活用に向けた取組について報告した。
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約4万台のGIGA端末は、小学校では持ち運びに適した大きさと堅牢制を重視。中学校はキーボードの大きさを重視して配備した。登校したら充電保管庫から取り出し、机の中や机の横の袋などに準備し、いつでも使えるようにしておくことを推奨している。
端末配備に合わせて、校内LANを増強した。普通教室のほか特別教室や体育館にWi-Fiを配備し、市教委サーバを経由しない高速接続環境を構築。まだ接続が安定しない学校については、随時調整する。
教材は、授業支援ツール(ロイロノート・スクール)、Microsoft365、ドリル教材(小学校にタブレットドリルを配備。中学校はeライブラリを配備済)を活用。家庭からも学校と同じ環境で使用できるフィルタリングサービス(AssetViewF)も導入した。
今年度は、学習者用デジタル教科書普及事業を活用するなどして、全小中学校に学習者用デジタル教科書も配備した。
GIGA配備に向けて、「GIGAスクール構想推進委員会」を立ち上げ、松山市GIGAスクール構想基本方針を策定。基本方針は「Society 5・0を生き抜く力の育成」で、ICTを学びに「いかす」「つなぐ」「ひらく」こととし、「『これまで蓄積した教育実践』と『最先端ICT』のベストミックス」を目標とした。
教育委員会の連携組織として「GIGAスクール構想推進専門部会」を設置して、愛媛大学や小中学校校長会、松山市教育研究協議会、松山市情報教育研究委員会、松山市の情報化を担当する部署であるICT戦略課と連携して進めた。
専門部会として立ち上げたのは、次の5つ。
▼教科等ICT活用部会=「『松山の授業モデル』とICT活用 各教科版」を作成してWebに公開。文部科学省の示す事例を松山市向けに再整理。授業のどの活動にICTをどう活用すればよいのかを示した。
▼情報活用能力育成部会=愛媛大学教育学部の協力を得て「松山市 情報活用能力育成目標」を作成。各学年の目標を示した。
▼特別支援教育ICT活用部会=活用事例など、特別支援教育ICT活用推進だよりを定期的に発行。
▼教職員ICTスキル向上部会=研修を実施(後述)
▼ICT環境整備部会=教育情報セキュリティポリシーを改訂。ICT環境整備も推進。
教職員ICTスキル向上部会では、導入する環境が決まった2020年度夏から授業支援ツールの活用に関する研修をスタート。実際の授業場面が想起できる内容を実施。
各種セミナーも新設。苦手意識がありフォローアップが必要な教員を対象とした「GIGAスクール基礎研修」、校内ミドルリーダー育成の「ICTスキルアップ研修」の受講者が講師となる校内研修の実施、大学と協力した「プログラミング教育研究指定校」などである。
従来から実施している、愛媛大学教育学部教授が講師となる「大学連携セミナー」、学校のニーズに応じて指導主事が訪問する「学校訪問研修」の充実も図った。
端末配備完了に合わせて、「授業支援ツールを使う」「デジタルドリルを授業で使い、学習履歴を確認する」「Microsoft365の簡単な機能を教師が使う」ことを、「令和2年度中にスタートさせる3つのステップ」として研修を実施した。
2020年度は、集合研修をのべ22回、約680人が受講。訪問研修ものべ22回実施、約600人が受講した。受講者が各学校で講師となって行う還元研修を入れると、全ての教員が少なくとも1回は研修を受けたことになる。
2021年度は、フォローアップ研修や経験研修を可能なかぎり1学期中に実施。中学校のテスト期間には遠隔で授業支援ツールの研修を行った。
ALTやICT支援員を対象にした研修も実施。各校への横展開を期待している。
学校や受講者のニーズに合わせて、教科の学びを深めるための、日常的な表現ツールとして活用する研修に徐々に移行していく。協働的な学びの実現に向けて、画面共有やノート共有、思考ツールによる整理、協働編集などの例を示して進めている。
今後は、さらに研修の充実を図る。SAMRモデル(ICT活用の段階。代替、拡張、変容、再定義)を示し、将来的な活用のイメージを示した上で、今どの段階にいるのかを伝えている。今後、端末の持ち帰りをスムーズに始めるための課題も解決していく。【講師】松山市教育研修センター指導主事・小田浩範氏
【第79回教育委員会対象セミナー・松山:2021年8月2日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年9月6日号掲載