教育家庭新聞社は6月19日、「高等学校における1人1台端末整備と活用」をテーマにオンラインセミナーを開催。熊本県、岐阜県、山口県の講演内容を報告する。
2019年に策定した『第3次岐阜県教育ビジョン』が、本県のICT整備・活用の原点になっている。最大の特徴は、身に付けるべき力を「自立力」「共生力」「自己実現力」とし、これを「ふるさと教育」を通じた地域課題探究学習で育むとした点だ。全県立高校を「グローバルな視点で課題を探究する高校」「地域に密着した課題を探究する高校」「地域と共に活性化する魅力ある高校」「地域の企業等と連携した専門高校」の4グループに分けて取り組んだ。新大学入試制度や推薦・AO入試にも対応できる幅広い学力向上、専門的・実践的な学びによる地域人材の育成やそれによる地域活性化など高校の特色に合わせた目的がある。
これらの学習に必要な環境の1つとして、ICT環境整備と研修を進めた。生徒は英語で地域の自然探究の成果を発表したり、地域の魅力を観光客に紹介したり、地域と連携して課題解決に貢献するプロジェクトに取り組んだり、地域産業の担い手として専門家に学び、新商品を提案するなどした。「世界らん展」にて最優秀賞を獲得した高校もある。
全県立高校で探究学習に取り組み、明確になったことは「教科書にない情報を収集し、取捨選択・編集、わかりやすく表現する情報活用能力が必須である」という点だ。
2019年度の整備は全教室への電子黒板機能付プロジェクター、実物投影機、Wi―Fi環境、端末などである。これらの整備により、2020年度のコロナ禍も4月下旬から全県立学校でオンライン学習を展開できた。
スタート当初は、教室をスタジオ化してライブ配信を実施。しかし当時、スマートフォンで視聴する生徒も多く、板書が見えないこともあり、その後は、教員作成のプレゼンテーション資料を配信する方法が主流となっていった。
2020年度後半には、約4万2000台の生徒用端末と生徒全員のMicrosoft365(A3Education)を配備してアカウントIDを用意。端末の修繕費も予算化して県で対応している。
授業支援として、インターネットを通じた同期がしやすく探究学習の経過を可視化できると考え、MetaMoJi ClassRoomを活用。LMSシステムとして、校務支援システムと連携しやすいこと、さらに学習履歴を蓄積しやすくデータ容量も無制限な点から、manabaも導入。これにより授業改善や課題の指示、添削のデジタル化などを進めている。
本年4月にはICT教育推進室も新設。15名が学校の支援や情報発信に取り組んでいる。
日本マイクロソフト社及び慶応義塾大学SFC研究所と連携協定を締結して、「未来を創る学び」の共同研究や校務のデジタル化による働き方改革も推進する。
【オンライン高等学校IT活用セミナー・高等学校1人1台端末活用:2021年6月19日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年7月5日号掲載