教育委員会対象セミナー「GIGAスクール構想 ICT機器の整備・活用」を3月1日神戸、3月9日福岡、3月16日静岡で開催。講演内容の一部を報告する。神戸開催は初。
水谷校長は春日井市のGIGA端末1人1台活用のポイントを報告。「GIGA端末とクラウドは、ちょっとした工夫で授業が高度になる。様々な体験研修を繰り返しながら無理はせず少しずつ、授業以外の場面で便利さを共有することで、半年で形ができた」と語る。
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春日井市(小中学校54校・児童生徒数2万6000人)では、ICTを活用した授業改善に取り組んで10年だ。ICTの便利さを感じないと教員の活用は進まないと考え、校務の情報化など業務改善から、教員がストレスなく行える環境づくりに努めており、GIGA端末とクラウド活用もこれと同様の考え方で進めた。これまでのICT活用の延長ではないと感じながら準備を始めたところで、3月の休校が始まった。今の環境でできることを考え、Googleドライブを使った教材動画の共有などを開始。実物投影機活用の初任者研修も5月にオンラインで実施。40校が参加した。
6月には全教職員にアカウントが渡され、わからないことは多いものの良い使い方があるだろうと考え、まずはGoogleフォームを使った希望調査や情報収集などの活用を始めたところ、集約も迅速で、簡単に情報を共有できることなどの便利さをすぐに体験することができた。
GoogleClassroomについては、非同期型のオンライン研修で使っているうちになんとかなった、というのが正直なところだ。「Q―U」に関する研修動画をGoogleClassroom上からアクセスできるようにしたところ、隙間時間を利用して何度も繰り返し視聴している教員がいた。動画視聴後のチェックシートや感想共有もGoogleClassroomに入れたものを利用して行っているうちに授業活用イメージを持つことができた。
学校長同士の情報交換も、これまではメール添付で結果を誰かが集約して、という形から、直接googleスプレッドシートに書き込むように変えた。入力をすればすぐに共有でき、結果が随時わかる。学校長がクラウドによる協働編集や共有の便利さを最初に体験したことは大きい。
6月の学校再開後の授業研究では、密を避けるために授業を中継して別教室で視聴して、感想や意見はGoogleスライド上に皆で書き込んで共有するなど、できることから行った。
ここまでが、1人1台活用前の「ステップゼロ」で、振り返るととても重要な段階であった。
GIGA配備のChromebookは先行して8月に4校が導入。「ステップゼロ」の歩みが授業改善を加速し、すぐに授業活用が始まった。教員からは「これまでと授業の進み方がぜんぜん違う」という声が届いている。ある中学校では1年数学で、Classroom上で授業の流れを指示し、比例定数が正の場合と負の場合のグラフを比較して比例グラフの特徴をデジタル付箋(Jamboad)で共有していた。短歌の鑑賞文を1人1枚のスライドにまとめる際は、作業中も互いに見ることができるので、全員がこれまでよりも早く、内容が濃いものを作成することができた。文章の推敲も個別指導がしやすくなったと聞いている。また、調べ学習などの情報収集も皆で共有して情報交換しながら進めていた。とにかく、いろいろな活動の密度が高くなり、子供の頭がフル回転するようになってきた。既に各教科でClassroomを立ち上げて活用している学校も多くある。
子供は登校するとメインのClassroomに入って連絡事項をメモ。スクールライフノートの「心の天気」にその日の気分を入力している。学級活動でもアンケートを作成・配布・回収するためにGoogleフォームを使っている。
振り返りの共有はスプレッドシートを利用する場合が多いようだ。これらのことが教員も子供も自然にできるようになり、これまで3年くらいかかっていた授業改善が3か月程度で進んだ印象だ。
GIGA端末を活用して2か月後の10月の調査では、8割の教員が不安を感じていたが、2月には6割まで減った。中学校3年生は、活用期間が短かったにも関わらず、Chromebookを利用した授業について93%が肯定的な回答。「とても良かった」という回答は66%であった。特に「意見共有」を容易にできたことの満足感が高かったようだ。
教員研修のポイントは5分程度でよいので「とにかく体験」すること、繰り返すこと。活用するための研修ではなく、活用した研修を行うことだ。【講師】春日井市立高森台中学校校長・水谷年孝氏
【第76回教育委員会対象セミナー・神戸:2021年3月1日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年4月5日号掲載