2月17日、第75回教育委員会対象セミナー GIGAスクール構想の整備・活用を名古屋で開催。会場参加とオンラインによるハイブリッド開催は初。3月1日開催神戸、3月9日開催福岡は会場参加のみ。
岡崎版GIGAスクール構想を進めている岡崎市教育委員会(小学校47校・中学校20校)では8月に全中学校、12月に全小学校にタブレット端末(iPad)の配備を完了。現在、活用のセカンドステージにある。川本氏が報告した。
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本市では「Myタブレット」として自分の端末を卒業するまで使うという発想で運用。iPadは管理運用で手間がかかるが、創造的で自由度が高く、教育効果を期待できる。アプリも教育委員会推奨のものを約150程度用意して学校判断で活用できるようにしている。
端末の活用促進を図ることは重要であるが、その前提が持続可能で円滑な運用だ。本市ではMDMを使って様々な制御やアプリの配信、アカウント管理等を行っている。GIGA整備で選択したMDMは、iPadとの親和性が高く、スムーズに管理できる。
運用管理の要はICT支援員と保守業者との協働体制。これが活用の成否を決める。Microsoftフォームズを活用して転出入やメンテナンスの情報を吸い上げ、保守業者へ共有することでタイムリーに連携している。破損の場合も2~3日で対応できている。
転出入が多い公立学校の特性に対応することも重要。ほぼ毎日、児童生徒の転出入があり、年度末には100人以上にのぼり、中学校の端末3500台をリフレッシュして小学校へ移設する。アカウントの進級処理もある。これらの年度更新を円滑に進める体制が必要で、年度更新作業を完遂して、初めてGIGA体制が整ったことになる。現在、この実施設計を進めている。
GIGAスクール構想で教員の多忙化が進むことは回避したいと考え、岡崎版GIGAスクール構想では、教職員の働き方改革と児童生徒の学び方改革を両軸として進めている。さらに最大限の活用を図るベストミックスを工夫している。
教員用PCはiPadで約2000台を配備。校務用PCはWindowsのノートPCで、自宅からリモートアクセスして校務用PCにアクセスできるようにした。iPadでもMicrosoft365を使えるようにしたことにより、教員の活用を促進した。ある学校では、職員朝礼をTeamsによるリモートで実施し、教室から参加。その間、児童は読書などの朝学習に取り組んでいる。
職員会議はペーパレス化がほぼ全校で進んでいる。印刷環境も改善。高速カラー複合機を全校に配備して業務改善につながっている。
協働学習ソフト(まなびポケット+スクールタクト)はGIGAの学びを日常化する切り札。画面共有や教育用SNSの機能により、児童生徒の参加度が上がっている。互いの意見や感想を読み合いコメントを付け合う活動は、深い学びにつながる。共有が瞬時にできることから「時短」になり、授業の山場にじっくりと時間をかけることができる。このことにより多くの教員が授業改善への手ごたえを感じている。
画面転送対応の無線APも常設して、iPadから画面ミラーリングできるようにしている。
ネットワークは集約型。学校間は1Gで接続し、約3万5000台のiPadが円滑に動くように調整した。今後はSINETへの接続も視野に入れている。
子供は登校するとiPadを充電保管庫から出し、移動教室も含めて一日中活用。下校の際に保管庫に戻している。入力は、フリック、音声、ソフトキーボード、ハードキーボードと学年により様々な方法で子供なりにベストチョイスをしている。スタイラスペンもマストアイテムだ。
岡崎市立南中学校では総合的な学習の時間をモジュール化。その日の最初に学ぶ内容が、今自分が最も興味のある探究学習であることから、密度の濃い10分間となり、良い流れで一日がスタートできている。
生平小学校では、毎年行っていた全校カルタ大会をコロナ対策でオンライン開催とした。協働学習ソフト(コラボノートEX)上にカルタの札を並べ、タップの速さを競う。編集権を取れば札を獲得したことになる。この取組以降、この学校では協働学習ソフトを使った授業づくりが定着。行事で生き生きと活動する子供の様子が様々な教員の授業アイデアを促したようだ。ICTの専門知識がなくても前向きでセンスのある教員がいる学校は学びの活性化が早い。【講師】岡崎市教育委員会・総務課学校情報係・係長 川本祐二氏
【第75回教育委員会対象セミナー・名古屋:2021年2月17日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年3月1日号掲載