2月17日、第75回教育委員会対象セミナー GIGAスクール構想の整備・活用を名古屋で開催。会場参加とオンラインによるハイブリッド開催は初。3月1日開催神戸、3月9日開催福岡は会場参加のみ。
全国の教育委員会や学校でICTを活用した授業づくりを支援している佐藤氏は、GIGAスクール構想環境のポイントと参照すべき好事例を紹介した。
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GIGAスクール構想は、児童生徒主体で活用して情報活用能力を育む環境を整えることが目的。教員主導の活用ではない、という点がこれまでと大きく異なる。
大量の端末が届くと、教員全員で準備が始まる。まず、アカウント配備と端末貸与に伴い保護者に同意を得る必要がある。
ある自治体では、親子で一緒に同意書を確認してサインしていた。とても良い取組だ。別の学校では「iPadは誰のもの?」「なぜ学校は貸してくれるの?」「パスワードはなぜ大事?」等、イラストとともにQ&A方式で、1年生でもわかるような説明資料を作成していた。その後、振り返りも行っており、「水につけちゃダメなことがわかった」「すごく大事に使いたい」などの感想から、児童にどこまで伝わっているのかもわかった。パスワードを考える宿題も出され、貸与1日目は、児童は最初にパスワードを入力してスムーズにログインしていた。
ほとんどの学校では、学年便り等で保護者に周知している。どのタイミングで保護者に伝えるのかも重要だ。兄弟が異なる学年に通っている場合もあり、学校全体で同時に発信することが望ましい。さらに、定期的に伝えていくほうが良いだろう。一度で理解できることはそれほど多くない。
キーボード入力に関する議論は様々あり、3年生から始める例は多いが、1、2年生から触れる指導があっても良いと考えている。
ある学校では最初に「もも」「くま」など二語から始め、毎日少しずつ難易度を上げていた。経験を積むほどタイピングは速くなる。ノートをとるのと同程度のスピードでタイピングができると、様々な学習に発展しやすい。日本のICTスキルはOECD諸国の中では最下位。ぜひ伸ばしていただきたい。スキルが身に付けば正しい姿勢も保ちやすくなる。ただしキーボード入力を最初から通常の学習に取り入れるのは難しく、手書き入力でテキスト変換できる機能を活用している例もよくみられる。
1人1台あると、机の中に入れておき、自分の判断でいつでも使うことができる。まずはいつも行っている学習過程の中から1点を取り上げて使うことから始める。やってみて初めてわかることは多い。写真を撮影して説明する、動画を撮影して振り返る等が取り組みやすい。
2020年8月から6年生が使い始めた学校では、それまでICT活用経験のない教員であったが、11月には外国語の冒頭時にGoogleフォームでほぼ毎時間、前時の振り返りをしていた。児童の解答は一瞬でグラフ化でき、どの部分が理解できていないかを確認してから授業をしていた。
翻訳機能を使って、自分の発音が正しい英語として認識されるかどうかという取組にも挑戦。積極的な音読やスピーチ練習に発展していった。
中学校3年「標準偏差」の学習を学年全体で行っていた学校では、一番後ろの席から大型提示装置が見えにくかった。そこで、GooglemeetやGoogleClassroomも併用して資料を共有。そのうち生徒は、質問のためにチャットを使う目的でほぼ全員がmeetにアクセスしていた。そうなると、協力、話し合いなどが始まり、教室でハイブリッドな展開が起こっていた。これを日常的に行うと、各グループの話し合いもオンラインで行うようになる。
もともとの授業が一斉指導だと、オンライン授業の際もそれをそのまま再現しがち。しかし日常的に授業がハイブリッド化していると、休校になっても、自宅でも学習が途切れずに継続でき、情報活用能力が育まれていく。
私もアドバイザーとして関わっている春日井市では、常に探求を意識した授業づくりであること、学習規律が整っていることが特長だ。
課題の立て方が上手く、そこに端末が入れば、意見交換がオンラインになり、付箋はデジタル付箋になって共有が迅速になるなど、効果的な活用がすぐに始まる。
情報活用能力育成を意識した授業の経験が少ない場合も、教員が校務などで情報共有を経験することでICT活用の理解が進み、授業アイデアが生まれやすくなる。【講師】信州大学教育学部助教・佐藤和紀氏
【第75回教育委員会対象セミナー・名古屋:2021年2月17日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年3月1日号掲載