「ICTを活用した公正で質の高い教育」の実現には、「公正」「質」の意味の共有が必要だ。国立教育政策研究所は「ICTを活用した公正で質の高い教育の実現」をテーマに2020年度教育改革国際シンポジウムをオンラインで開催。討議で堀田龍也教授(東北大学大学院)は「学力に対する大きな方向転換が世界的に起こっている。新しい方向性を知らずにリーダーシップを発揮することは難しい」と指摘している。
「公正で質の高い教育」におけるICT活用を促す要素について調査を実施。本研究は、国立教育政策研究所「高度情報技術の進展に応じた教育革新に関する研究」(2019~22年度)の中間報告だ。調査対象は800市区町村教育委員会と所管の小・中学校2503校。調査はWebで行った。
調査によると、ICT活用に積極的な学校である最も大きな要因は、校長のリーダーシップであった。このほか、教育委員会の支援、ICTについての教職員理解、授業準備のゆとりなど。
また、ICT活用レベルにより、促進要因は異なった。
ICT活用低位では、支援員がいると進みやすい。ICT活用高位では、管理職が新しい授業観を持っていること、個人情報保護について積極的に検討していることなど。
ICT活用の阻害要因として、校長の平等分配志向とセキュリティ懸念がある。
休校期間のオンライン学習の実施要因についても分析。休校期間、オンライン学習を実施できた自治体は次の傾向がある。▼PC等の配備、▼個人情報保護について相当の議論を重ねている、▼教育長が革新的(問題発見・解決力、批判的思考、創造力、アクティブ・ラーニング等を重視)、▼情報教育担当指導主事の配置
学校については生徒指導困難校、大規模校、校長の伝統的授業重視傾向が強い学校において、ICT活用が進みにくいと指摘。教育委員会の支援とICT支援人材、キーパーソンが重要であるとした。2021年度は教職員や児童生徒の変容等の促進要因について調査を行う。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2021年3月1日号掲載