第71回教育委員会対象セミナーを10月6日札幌市内で、72回教育委員会対象セミナーを10月9日仙台市内で開催し、札幌会場は約200名、仙台会場は約100名の教員と教育委員会担当者が参集した。
宮城県岩沼市教育委員会は今年12月末までに、市内全小中8校の児童生徒3840人及び教職員314人、計4154人にiPadの配備を完了予定だ。学校教育課の矢口晃課長は岩沼市のGIGAスクール構想の進め方と活用ビジョン「まなびi(あい)スクール構想」について話した。
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岩沼市では2012年度から全教職員にAndroid端末を配備し、活用を進めていた。2018年度からは年3回のIT研修で各校の核となる人材育成支援に取り組むと共に管理職が質の高い助言をできるように管理職研修を行うなど研修の充実に努め、学校ぐるみで魅力ある教育環境作りに取り組めるようにした。
2019年12月にGIGAスクール構想が公表され、岩沼市ではスピード感を重視。2月議会で校内LANと市内全小中学校に1人1台のiPad配備を決めた。費用は総額約3億1000万円で、市の負担は約1億5000万円。明許繰り越しにより現在進行形で配備中だ。
教職員のiPad配備は完了しており、2020年度中に児童生徒1人1台配備が終わる予定。さらに家庭貸与用WiFiルータや遠隔授業用ツールなどを導入予定だ。
校内LAN整備については回線速度が不足していること、VLANの構築が必要なこともあり、回線速度の増強やアクセスポイント(AP)の更新・追加などを進めている。今回の整備により、回線速度の増強に加え、教職員は、職員室以外でも校務ができるようになる。
2019年度教育の情報化実態調査によると、岩沼市のICT環境整備の配備率は、統合型校務支援システムを除き県平均及び国平均をおおむね上回る数値となっている。校務環境の情報化は今後の課題であり、統合型校務支援システムについては2022年度までに整備する計画だ。
ハード整備の後はソフト面の充実が必要だ。
宮城県では県域でG Suite for Educationの導入を計画しており、仙台市を除く多くの市町村から希望があったようだ。それに対応する形で児童生徒にアカウントを付与する。岩沼市ではG Suiteモデル運用校の申請をし、一歩踏み出したところだ。9月にタブレットドリルと授業支援ツールを小中学校に導入し、小学校高学年には英語のデジタル教科書を導入した。1人1台環境になる前に現在の環境で活用を探っていく。
本市では「協働的に未来を創造する児童生徒を育む」ことを目標として「まなびiスクール構想」を策定。これを育む素地としての学校環境を整えていていく。学びiの「i」は、Iwanuma、ICT、Interestだ。岩沼市の魅力的な地域素材を生かし、ICTを効果的に活用して児童生徒の興味関心(Interest)を引き出す意味を込めた。本構想策定については、教職員や校長会、教頭会、地域の有識者で知恵を出し合った。
整備・活用にあたり、ビジョンを示すことが最も重要だ。皆の意識を焦点化して育成したい児童生徒の姿を共有し、同じ方向を向くことで、活用も研修もより効果的に進んでいく。
ビジョンを基に今後のロードマップも作成した。
今後の進捗につれて出てくるであろう様々な課題については、その都度対策を立ててロードマップも随時見直していく。足元を固めて1人1台活用を、指導力向上や学力向上、不登校対応を始めとする様々な課題解決のきっかけとしていきたいと考えている。【講師】岩沼市教育委員会学校教育課・矢口晃氏
【第72回教育委員会対象セミナー・仙台:2020年10月9日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年11月2日号掲載