大阪府立高校に2年前まで勤務していた勝田教諭は、今回の休校を受け、自身がリーダーを務めるGEG Sakaiのメンバーと共に大阪府の公立高等学校を主な対象としたGSuite活用オンラインセミナーを計3回実施。総参加者数は145校555名に上った。一方で、勤務校である清教学園では中・高のオンライン学習の体制をプロジェクトチームのメンバーと共に確立。マルチOSのBYOD環境にある同校のオンライン学習実施までの取組を報告した。
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本校の高校生は2017年度よりBYODで、自分の好きなPCを持ち込んで活用できる。全教員はiPadを所持し、中学生にはChromebookやMacbookを貸し出している。先進的な環境ではあったが教員にとっては負担も大きかったようで、活用にはバラつきがあった。今回の休校期間は、プロジェクトチームのメンバーや管理職と議論し、オンライン学習の目的を「学習機会の保障」「生活習慣を整えること」「不安の軽減」の3つを示し、様々な通信環境、デバイス、OSの違いに左右されないプラットフォームとしてGoogleClassroomを中心に、最低限必要なアプリを選定して進めた。
朝、生徒は決められた時間にGoogleClassroom上で出席フォームに回答後、Google MeetでオンラインHRに参加。午前中は特別時間割に添って最大4時間のオンライン学習を同期で行う。Zoomを使ったりオンデマンド型を併用したりの判断は教科に一任。4時間が終了したら、一日の学習をスプレッドシートでふり返り。このシートには、教員もコメントを記入。教員が見ていることが生徒にわかることは重要だ。新しいシートを作成して長文を記入している生徒もいた。
午後は各教科の課題を元に学習をしたり、GoogleClassroom上で質問をしたり、面談を行ったり、好きなことを探究する時間とした。
高校1年の担任であったため、学期初めのオンラインHRでは、生徒は顔を出して自己紹介。聞きながら大きくうなずく、拍手代わりに「888」と入力するなど、オンラインならではのコミュニケーションに慣れながら積極的に参加する姿勢が見られた。
オンライン学習の1つとして図書館の先生がブックトークを実施。チャットで質問などのやりとりもした。この取組は現在も継続しており、子供とかかわるチャンネルが増えた。
4月22日からは職員会議もオンラインで実施した。
ふり返ると、取組のポイントは3つあった。
1つめは共通認識を持つこと。オンライン授業ではなく、任意参加のオンライン「学習」とし、「全員がいつもよりちょっとだけ優しく」をキーワードに、この期間の取組の目的、オンライン学習の3つの型(リアルタイム学習、課題配信型、オンデマンド学習)から必要に応じ、柔軟に組み合わせたり取捨選択したりすること、学校としてのオンライン学習の姿勢を事前に全員で共有し、教員も生徒も全員が参加できるオンライン学習を目指し、失敗しても良いし成功したら最高であるという姿勢で進めた。全国で取組が始まっているオンライン学習等の記事も共有した。
2つめのポイントがウォーミングアップデイとサポートステーションを設けた点だ。
プロジェクトのコアメンバーですべてをフォローすることは難しい。そこで、準備期間としてウォーミングアップデイを設け、動画配信やZoomでやりとりしている様子など、できる教員ができることを他の教員に見せる期間を設けた。その上で、困ったときにいつでも質問できるサポートステーションも設けた。
3つめが、タイムラインの共有だ。「今こんなことに取り組んでいる」「こんな意見が出た」「もうすぐこうなりそう」等、常に共有を心掛けた。ICT活用に長けているメンバーだけで進めないように小さなことも確認して授業イメージがずれないようにし、スケジュールにも柔軟性を持たせた。
様々な課題を乗り越え、6月中旬の通常登校再開後は、授業や教員の意識、学校環境に変化があった。
まず、学びのプラットフォームとしてGoogleClassroomが定着した。課題配信や動画教材の掲載、話し合いの場などに活用されている。授業動画の作成を継続している教員もいる。
休校中の経験から、これまでにない形態で実施される行事も増えた。例えば、学年集会は同期で、生徒会役員選挙は非同期型で進めた。生徒主体の部活動紹介もGoogleSiteを活用。力作が集まった。生徒の創作に関するポテンシャルは非常に高く、発揮できる場が求められていると感じた。
教員も、学校活動で様々な制約にぶつかる度に「オンラインでできないか」と多くの教員が柔軟に考えるようになった。生徒や保護者から感謝されることもあり、信頼関係が再構築された。
オンライン学習を実施する際には、教員が立ち戻って考えることができる原点として、「Why(なぜオンライン学習を行うのか)」を強く持つことが重要。これはICT環境整備にも言えることである。【講師】清教学園中学校・高等学校ICT教育部部長・情報科教諭・勝田浩次氏
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教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年9月7日号掲載