2004年に創立した西京高等学校附属中学校は、京都市立唯一の併設型中高一貫校だ。昨年度から京都大学と連携して生徒1人1台のPC活用を開始。当初は3年生のみ持ち帰りを許可し、9割の生徒がほぼ毎日持ち帰っていた。今年度の休校期間では、全員が持ち帰って数学の課題や健康観察を行った。ルールは「学習活動のみに使うこと」。ウェアラブル端末の活用も6月に開始したところだ。家庭でPCを活用する際も学校で閲覧する環境と同様の環境を提供している。同校の活用について宮部主幹教諭が報告した。
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本校では、京都大学から提供されたMoodle、BookRollと分析ツールを活用したオンライン授業を展開している。
学校の授業をオンライン化する際は、そのままオンライン化するのではなく、非同期や同期などを組み合わせてオンラインならではの良さを取り入れていく必要がある。
そこでオンラインオンデマンド型授業に取り組んだ。生徒はBookRollに配信される授業ページを開き、ノートに重要なことをまとめたり問題を解いたりする。最後に演習問題を解き、理解度に関するアンケートに回答。教員は、分析ツールで生徒の到達度を確認。授業ページを閲覧しているかどうか、クイズの正答率や提出ファイルの状態を確認し、到達度に応じて次の課題を考える。ページ単位の閲覧時間が長い問題は、難易度が高い可能性がある。
オンデマンド型は好きな時間に好きな場所で自分のペースで学習ができる。
デメリットもある。自己管理に差が生まれること、教材作成に負担があること、モチベーションの維持、対話する機会の難しさなどだ。そこで、それぞれについて対策を考えた。
自己管理については、対面授業の際にも行っていた朝の健康観察をオンラインで行い、Moodleに入力。個別の時間割表を作成して自己管理力を高めるようにした。
教員は月曜日の朝に20時間分のコンテンツ(授業内容をPDFで紙芝居化したもの)をMoodleにアップ。
生徒は1日4時間を目安に時間割を作成。さらに1日2時間、週15時間の自学自習を目標とした。
宿題については、その日のうちに終わらせることを原則とし、Moodleを活用してファイル提出やアンケート回収、BookRollによるクイズやメモ、学校再開後のノート提出や確認テストを行っている。
教材作成については、教科書をもとにしたコンテンツを紙芝型で作成することとした。一斉授業のエッセンスを抽出し、ポイントを「厳選した発問」と「個別活動」の2点として教科書をダイナミックに構成した教材だ。
生徒のモチベーションは日々落ちてくるので、分析ツールで生徒の教材閲覧状況や課題等提出状況をリアルタイムで把握し、取組が滞っている生徒に電話をかけたりコメントを記入したりして維持できるように配慮した。
対話の確保はオンラインオンデマンド型授業で最も難しい点だ。そこで同期型授業として、Moodleのフォーラム機能を活用。指定のグループ内で意見交換する時間を設けた。
紙芝居型形式の授業で明らかになったことは、生徒の順応性の速さだ。できないかもしれない、と感じていたこともほぼ対応できる。
対して、教員へのサポートは必須。京都大学からは週3回程度、ICT支援員の派遣を受けている。ICT支援員のサポートもあり、分析ツールの有用性が浸透し、教員のICTに対する意識は確実に高まりを見せた。
今後、さらに効果を検証していく。【講師】京都市立西京高等学校附属中学校主幹教諭・宮部剛氏
【第69回教育委員会対象セミナー・京都:2020年8月8日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年9月7日号掲載