姫路市教育委員会(小66、中32、義3)はGIGAスクール構想で小中学生に1人1台のChromebook約4万台を4年リースで配備、8月には納入が始まる。2009年度から情報政策室でインフラ整備を担当し、2018年度から教育研修課に所属して整備を担当した藪上氏が報告した。
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当初姫路市では2022年度に整備完了を考えていた1人1台PCだが、GIGAスクール構想の前倒しでChromebook約4万台を追加整備し1人1台環境を今年度中に用意する。
台数が多いため、単独調達とした。
コロナ禍で世界的な部品不足との情報もあり、5月に調達を開始することで早期の配備が可能になった。PCは5年リースが多いが、バッテリーの耐用年数を考慮し、4年リースとした。
なぜこのような整備としたかについては、2013年度に導入したタブレットPCは初期化ソフトが毎回起動し、デスクトップが表示されるまでに時間がかかったことや、6年間活用する中でバッテリーが1時限ともたなくなるなどの問題があった。
また、OSのアップデートの際のトラブルもあり、当時運用していた台数でもかなり大変だったため、これが4万台になることを考えると、同様の整備は避けたいと考えた。Chromebookを選んだのは長い電池持続時間、起動の速さ、頑丈で壊れにくい、セキュリティ面で優れており初期化が不要のほか、何よりもクラウドによる運用管理が容易である点を評価した。
検討課題はネットワークの強化だ。
校内のネットワーク整備は複合的な整備のため、小規模校を除き業務委託で実施。現状1クラスあたりに必要な帯域は100M程度となるため、支線は既存の配線(Cat5e)を活用することとし、10G化(Cat6A)は幹線のみとした。
4万台のPCが起動して問題なく接続するには、1台あたり1M必要であると考えると40Gが必要になる。そのコストは膨大になるが、それを回避するため、兵庫県及び兵庫県立大学の協力を得てSINETに6月から10Gで直接接続。2022年度には40Gで接続することを考えている。接続先との距離も近く運用コストもそれほどかかっていない。
アカウント配備はもともと今年度の配布を予定していたが、コロナ禍の対応で早まった。
まずはアカウントの整備が重要と考え、小中高生約4万5千人にGSuiteのアカウントを郵送。
各自ログインして確認することを家庭に依頼し、接続状況を確認した。その際多くの問い合わせがあり、主にスマートフォンからのログインの方法がわからないことであった。
アカウントについては、IDは文字列としたが、表示名は氏名が表示されるようにした。年次更新を容易にするため、所属する学校以外の情報を入れない運用を行う。
今後はGoogleClassroomをベースとした活用やクラウドベースのドリル教材の活用を想定。クラウドの活用により、提出物や宿題等の配布・回収・採点の効率化を考えている。
課題は、家庭の通信環境だ。低速環境にも配慮できるオンライン学習の方法が必要と考える。
ただし、この度の国庫補助で整備する貸出用のWiFiルーターについては、緊急時のみの対応とし、使用料負担の観点から最低限の台数を予定している。
校務用PCを指導者用PCとしても活用できる方針に転換。無線の切替により実現し、校務系の無線ではセキュリティの高いEAP―TLS方式を採用。これにより無線のセキュリティを担保すると共に、データの受渡しがなくなりUSBメモリの使用が激減。また、指導者用PCをなくすことでコストも激減し、市長から「カイゼン表彰」を受賞。これらの努力により財政部局の信頼を獲得し、今回の調達にも役立った。
1人1台PCとなることで小中学校のPC教室を廃止の方向で予算を確保。PC教室はプログラミング教室に衣替え予定だ。既にロボホンを導入済で、本年度はマイクロビットを1クラス分導入予定。
GIGAスクールサポーターは、ICT支援員を補完する役割で8名を半年間程度配備予定。
コロナ補助金では三密を避ける目的で、空き教室等に電子黒板を調達中。今後は教員研修のほか、3校の研究協力校で活用実践を進める。【講師】姫路市教育委員会 総合教育センター教育研修課主任・藪上憲二氏
【第68回教育委員会対象セミナー・大阪:2020年8月3日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年9月7日号掲載