2020年2月6日、福岡市内で第64回教育委員会対象セミナーを開催し、約130名が参会した。
1900年創立の岩田学園岩田中学校・高等学校では中校一貫のIWATAコースと高大連携のAPU・立命館コースを要する男女共学(約600名)の私立学校だ。技術・情報科の八木教諭は同校でICT主任を務めており、2018年度より同校のICT導入・活用を担当。同校の活用の特徴と成果を報告した。
同校では保護者負担で中学校1年生から高校2年生まで一斉にiPadを、教員向けにSurfaceを導入した。
新入学時に生徒用端末を導入するというスキームだと全生徒に行き渡るまで6年間必要だ。6年経つと世の中も相当変わる。また、教職員研修も「導入した学年のみ」となりがちで、全校体制となるまで時間がかかる。そこで、本校規模であれば全生徒一斉導入で教員研修も一斉に行ったほうが効果的であると考えた。
生徒用をiPadにした理由は、Applepencilが活用しやすかったこと、生徒の6割がiPhoneを活用しておりすぐに活用できる可能性が高いこと、アプリが安定していることなど。iPadは9・7インチ、11インチ、12・9インチ、32GB、64GB、256GBなどを用意。自由選択とした。iPadminiは、2台目として購入する場合のみ選択可とした。なお入学時はカメラを使用不可とし、情報モラル教育を進めてから使用を開始している。
教員をWindowsPCとした理由は、ファイル管理のしやすさ、Office365を使用したかったこと、指導者用デジタル教科書を活用したかったこと。校務用PCと2台持ちだが、将来的に1台に統合する予定で、自宅で仕事できる設定とした。
教室も大幅に変更。黒板を撤去して液晶ディスプレイとホワイトボードを設置。ディスプレイは黒板の天地に合わせて84型とした。生徒用PCはAppleTVで提示し、教師用PCはLAN経由で提示している。
Office365は全生徒が活用できるようにアカウントを配備。このアカウントでiPadを活用。G Suiteも活用できるように準備中で、クラウド活用を2系統に分けたいと考えている。現在はOneDriveを1TB、iCloudを200GB使っている。
グループウェアは、教員はサイボウズ、生徒や保護者間ではClassiを活用している。
授業支援ツールとしてmetamojiclassroomも活用。
PC室は今年度からiMacとし、Windowsも使用できるようにした。
1人1台PCのポイントとしては、通信環境と管理方法、活用イメージの明確化だ。やりたいことが明確だとICT活用はうまくいくという事例を多くみてきた。成績が上がるか否かは教員の活用次第である。
生徒が自由に活用すると管理が難しい、という教員もいるが、生徒を管理したい教員にとっては課題だろう。何のために管理するのかを考え直すべき部分もあると考えている。不適切な指導が増えた、という声も中にはある。何が不適切なのかを考えたほうが良いと感じているところだ。授業がとにかく楽しい、協働作業がしやすいなど生徒の声は9割方好評だ。集中できなくて遊ぶことがある、という生徒もいるが、遊ぶ生徒はiPadがなくても遊ぶ。全体としては「導入前に戻りたい」と考えている教員・生徒はほぼいない。【講師】岩田学園岩田中学校・高等学校進路指導部・ICT主任・八木真也氏
【第64回教育委員会対象セミナー・福岡:2020年2月6日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年3月2日号掲載