2020年2月6日、福岡市内で第64回教育委員会対象セミナーを開催し、約130名が参会した。
遅刻や不登校など問題のある子供が目立っていた6年前、全教育活動で『学び合い』を行うこと、ICTを活用することで学習集団として成長、学力も向上した事例について髙木校長が報告した。
本校では6年前、これまでの学校観、子供観、授業観を見直し『学び合い』を取り入れた。『学び合い』は、生徒相互で教え合い、学び合い、自発的に学習していく授業だ。学校は多様な人と折り合いをつけながら学ぶ場であるとして、多様性を認め合い思いやりある共同体を目指す。
授業の流れは「導入10分、展開30分、ふり返り10分」で、展開は生徒主体の活動が中心で、教員は子供の力を信じて待つ。
生徒の意欲・関心の拡充、知識・理解の補完、技能の習得、思考の深化・拡大の4視点からICT機器も積極的に活用。ICT環境整備率において福岡市は全国最下位レベルであるが、本校には生徒用にタブレットPC120台(内iPad80台)があり、全校生徒約160人程度のため、生徒1・5人について1台の割合で活用できる環境だ。
非常勤講師を含めて教員も1人1台、専用で活用している。全普通教室にはプロジェクターとスクリーンがあり、特別教室と体育館には大型ディスプレイを設置。iPadでディスプレイやプロジェクターに提示するためAppleTVも整備済だ。
これらは学校独自予算で整備したもの。『学び合い』が上手くいきだしてから、地元企業やPTA、同窓会の協力により徐々に充実。プロジェクターの設置などは教員を中心に行った。
本校の教員は、『学び合い』を構成する重要なツールとしてICT環境を活用している。
授業ではプロジェクターで課題を提示。課題の内容により、自由にグループになる。1人で取り組むのも可だ。次第にグループの構成メンバーも変わっていく。課題が終わった人は黒板に名札を貼り、まだ終わっていない人を教えにまわる。
ふり返りでは、小テストやふり返りシートの記入、自己評価などを行う。
『学び合い』は、学力向上にも寄与した。全国学力学習状況調査では、3年の数学で全国トップの県を超える成果を上げた。不登校や遅刻も減り、お互いを思いやる集団に変わっていった。学級集団のアセスメントを計測する「Q-U」では、「悩み相談ができる人がいる」「みんなのためになることを自ら見つけて行動する」など多方面で好結果が出た。
学校視察も増えた。視察に来た方からは「子供たちの学び合いが定着しており、表情も良い。納得しようとする姿に感動した」という声を頂いている。
外国語を母語とする生徒にとっても『学び合い』は有効だ。毎時間のように友達と会話するため日本語能力が急速度で身につく。日本の生徒にとっても、例えば社会科でフランスから来た生徒は移民問題について、ソウルから来た生徒は日韓間の領土問題について伝える場面がみられた。
2017年度からはドイツのケルン市に毎年17名の生徒が現地の学校で『学び合い』を行っている。オーディションで選抜された生徒はタブレットPCを使って東光中学校や福岡市についてプレゼンテーションを行っており、遠隔会議による交流も実施している。
新学習指導要領で求められる資質・能力の育成を視野に本校の『学び合い』の深化を図っている。具体的には、これまでの『学び合い』で取り組んでいなかった「自ら課題を設定し答えのない解を見つけ出す」段階に取り組んでいく。【講師】福岡市立東光中学校校長・髙木徹氏
【第64回教育委員会対象セミナー・福岡:2020年2月6日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2020年3月2日号掲載