11月7日、札幌で教育委員会対象セミナーを開催。当日は120名を越える教育委員会職員や教員、事務職員が道内から参集した。
2013年に首長部局から教育委員会教育総務課に就任、昨年度まで所属していた山口晃弘氏が恵庭市のICT環境整備に向けた予算確保・整備と活用について報告。
現在、恵庭市(小学校8校、中学校5校、クラス数211)の児童生徒数はピーク時の2014年220クラスよりも若干減っているが、人口としては増えている状況だ。就任当時、学校現場のICT環境整備の動きに驚いたが、総務省・フューチャースクール推進事業のモデル校に石狩市内の小学校が採択されたこともあり、児童生徒1人1台の情報端末活用は、時代として避けては通れないと理解した。
2013年の教室環境は、42インチのテレビのみで、有線無線LANは未整備。PC室のPCはデスクトップ型であった。そこで、全教室のICT環境整備に向け、実物投影機を先行して整備することとした。これは、堀田龍也教授(東北大学大学院)の講演や指導主事との話がきっかけだ。テレビと接続して大型提示環境が整備でき、活用もイメージしやすく効果が上がりやすいこと、経費も比較的安価な点もあり、財政課に予算を要求。すぐには通らなかったが何度か要求し、年度末に整備が決まった。
機器選定の際は、机に設置した際に落ちにくい重量感があること、シンプルな操作、シェアの高さなどを重視した。
次に着手したのは無線LAN環境だ。ネット環境があればインターネット上のコンテンツが利用できる。大型提示機器活用のためには必須であると考えた。タブレット同士などの接続にもLANがあると活用が進む。無線LAN機器選定のポイントは、給電方法、国内メーカーであること、セキュリティ機能があること、タイマー機能など。端末の整備規模を考慮し、廊下に設置して全教室をカバーすることとした。
ネットワークの設計は、物品とは別に調達。図面を残すことで、不具合の調整や再構築、更新の際に効率的に引き継ぐことができる。
次に着手したのが電子黒板の全教室整備だ。積極的な学校からモデル事業として活用を開始。事務職員から管理職まで一丸となって取り組んだ学校もあり、周囲の学校に活用イメージが広がり、円滑な整備と活用につながった。
機種選定のポイントは、表示画面の大きさ、使いやすさ、見やすさ、耐久性、専用ソフトの使い勝手などで、65インチのディスプレイ型を選定。ハード的にボタンがある方が初めての教員にも使いやすいと考えた。
小学校の整備内容は、電子黒板と常設のノートPC、デジタルチューナー、デジタル教科書、授業支援ソフトなど。中学校も基本は同じだが、ノートPCの常設ではなく、教員が自分のPCを画像転送して電子黒板に映すようにした。
特別教室用には、82インチのホワイトボード型電子黒板を各フロアに1台整備した。
タブレットPCはPC室の更新に合わせて2014年度から開始。現状、各校に40台程度の可動式PC整備までできた。クレードル経由でマウス、キーボードを接続し、無線LAN有線LANどちらも使えるようにして児童生徒が普通教室で利用したり教員が授業用として活用したりできる。
タブレットPCを学校予算で追加で配備している学校もあり、今後は台数をさらに増やしていきたいと考えている。
整備と活用に向けて学校と教育委員会のコミュニケーションが重要だ。恵庭市の教育予算要望委員会は、各校の担当が集まって予算要望書を10月くらいに提出している。ここでも根気強くICT環境整備を要望。これらを後ろ盾に首長部局と交渉した。
教育委員と共にモデル校を視察して必要性や有用性についての理解を深め、総合教育会議でも提案した。
単年度の一斉整備か、長期的計画的に整備するかについても検討。一斉整備は、一度に環境がそろい、スケールメリットも期待できる。その反面、次の整備・更新まで期間が空き、情報収集や仕様書作りを一から始める必要がある。
毎年、計画的に整備を行えば、整備内容を常時把握、より良い環境にバージョンアップすることもできる。計画的な整備の方が、恵庭市の特別予算である防衛省補助金を確保しやすいという面もある。
統合型校務支援システム北海道版の導入については、最初は身構える教員もいたが、子供のためになると理解できると、教員の動く力は素晴らしく、助けられたことが多くあった。【講師】前恵庭市教育委員会教育総務課長(現・恵庭市経済部商工労働課長)山口晃弘氏
【第62回教育委員会対象セミナー・札幌:2019年11月7日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年12月2日号掲載