11月7日、札幌で教育委員会対象セミナーを開催。当日は120名を越える教育委員会職員や教員、事務職員が道内から参集した。
北海道における教育の情報化の推進について北海道教育庁教育環境支援課の深見亘主査が報告。小学校プログラミング教育、ICT活用の推進、遠隔授業、統合型校務支援システムについて話した。
「北海道における教育の情報化推進指針」を2017年に策定し、以下4つの柱で推進している。▼情報活用能力の育成▼ICTを活用した分かる授業づくり ▼遠隔授業・遠隔研修▼校務の情報化
さらに、これらの基盤としてICT環境整備がある。
学習の基盤となる資質能力として情報活用能力が示され、子供たちに確実に身につけるべき力としてプログラミング的思考や統計等に関する資質能力等が示された。
小学校のプログラミング教育は、プログラミングの体験を通して、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身につける学習活動だ。実施は各教科等で可能なため、自由度が高いが、時数や内容について学校現場は悩んでいる。
そこで道教委では、2019年1月にプログラミング教育研修会を実施。同3月には事例集や校内研修資料を発行した。さらに、今年度からは、北海道プログラミング教育事業を全道20校の研究実践校を指定して開始。研究指定校で、先進地の視察や研究実践の成果を公開授業の形で順次普及している。
市町村教育委員会や学校を支援するため、各都道府県や市町村の実践から特に役立つと考えた事例や参考資料、支援団体を一覧にまとめ、Webで提供するとともに、プログラミング教育質問窓口を設け、外部連携や研修の方法、外部講師の紹介、教育課程の編成についてなどの問合せに対応している。
9月にはつくば市の中村指導主事を招いてプログラミング研修会を開催し、先進事例を学んだ。
各教育委員会では次年度の実施に向けて、今年度中にどのような環境でどのような授業を実施するのか、学校と連携して準備してほしい。
今年度の全国学力・学習状況調査によると「授業でのPC活用」は、北海道において小学校は全国平均以上だが、中学校は平均以下であった。大型提示装置の活用も同様の傾向だ。学力調査結果とのクロス集計では、「毎日活用している」中学校は、国語や算数の平均点が高い。ところが、小学校では「毎日活用している」学校の平均点が低いという結果が見られた。このデータだけでは断言できないが、ICT機器の普及に従い、活用方法についての教員研修等を強化する必要があるのではないかと考えている。
そこで、全道にICTを活用した分かる授業づくりを普及するために、まず、指導主事の研修が重要であると考え、2019年9月、北海道ICT活用指導者養成研究を実施。道教委・市町村教委の指導主事など46人が参加した。
北海道は、高等学校における遠隔授業の先進地域でもある。文部科学省の研究開発校事業と道教委の独自事業「地域連携特例校」の二本立てで、ビデオ会議システムと専用回線を使用して取り組んでいる。
2事業で、約50校に機器を整備し、日常的に取組を進めている。さらに、全道各14の教育局にビデオ会議システムの機器を2台ずつ配置し、貸し出しなどをすることで、それ以外の学校でも、遠隔会議や遠隔研修が可能となるようにしている。小・中学校においては、幌延町立幌延中学校と幌延町立問寒別中学校の間で、ビデオ会議システムとタブレットを活用して、社会科の遠隔合同授業を日常的に実施している。
特別支援学校でも研修や授業での活用が始まっている。
道教委の研修でも、一部を遠隔で実施したり、オンデマンド講座で配信したりするなどの取組を実施している。
2019年8月現在、道内56自治体334校で活用中。モデル校では一日あたり校務時間が29分間削減された成果も報告されている。全道に導入を依頼しているところで、年度末には400校以上に増える予定だ。その普及を図る取組として、8月には教育ICTフォーラムを実施。来年1月には第2回も開催予定だ。
今後は学校教育情報化推進計画の策定、道立学校ICT環境整備、小中高一貫した情報活用能力の育成や教員ICT活用能力向上に向けた取組、高等学校遠隔教育の将来構想の策定を予定している。
▼資料∥www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/kks/ 【講師】北海道教育庁教育環境支援課主査・深見亘氏
【第62回教育委員会対象セミナー・札幌:2019年11月7日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2019年12月2日号掲載