川崎市立旭町小学校(小林達也校長・神奈川県)は11月9日から開催するJAET川崎大会公開授業校の1つ。同校では当日、小学校5年「算数」、6年「算数」「総合的な学習の時間」でプログラミング教育を盛り込んだ授業を公開。5年生は「小学算数 プログラミング教材」(教育出版)、6年生はプログラミングロボットを活用する。プログラミング教育を担当する北原博子教諭、福島美紀教諭、清水恭子教諭に聞いた。
今年、5年で公開授業をする北原教諭は、「正多角形と円」でプログラミングを使った正多角形の作図に取り組む。活用ツールは「小学算数 プログラミング教材」(教育出版のHPで公開中)。これは「正多角形の作図(5年)」と「目的地までの行き方(4年)」などで活用でき、正三角形や正方形などの形をした「コース」を、はみ出さないように車を動かすプログラミングを考え、試行錯誤できる教材だ。正三角形、正方形、正五角形、正六角形、自由描画のコースが選択できる。北原教諭は昨年度、清水教諭が行った授業の流れに倣った授業展開を予定している。
10月に本教材を使って正方形と正三角形の作図を行った様子を聞いた。
「正方形の角の大きさは90度。『5進んで90度回転する』を4回繰り返すプログラミングで成功した児童は、何の疑念も持たず正三角形のコースについても60度回転と入力します。ところが実行すると、車は大きくコースをはみ出す。どうして、なぜ、と教室は大いに盛り上がりました」
車が曲がる角度は内角ではなく外側の角度であることに気付き、手で作図するときとプログラミングで作図するときの命令が異なることへの気付きにつながった。「Scratchでも同様のことはできますが、『小学算数 プログラミング教材』では正多角形の形がコースになっており、車を動かす、という仕掛けになっているので、作図の動きをイメージしやすいようです。動きもScratchよりゆっくりでわかりやすい」
車がコースを外れることは明らかな誤り。人間なら気付いた時点で止まれるがプログラミングされた車はプログラム通りに動き、どんどんコースを外れていく。児童はそこに衝撃を受けるようだ。
昨年度の授業では、正三十六角形の自由描画に挑戦する児童もおり、ほぼ円であるという発見を共有できた。授業後の感想では「分度器で正五角形を正しく書くことは難しいが正しくプログラミングすると正確にきれいに書ける」「手による作図で100回繰り返すことはできないがプログラミングだとすぐできる」などプログラミングの特長を捉えた感想がみられたという。
昨年の授業をふり返り、清水教諭は「外の角を回る、という点を捉えきれない児童がいた。補助教材を作ったり、タブレット上に分度器をあてて計測して考えたり、プロジェクターに画面を投影してチョークで書き込みながら説明すると分かりやすかったようだ」と語る。本年の公開授業当日は、正六角形のプログラミングを予定。北原教諭は「自由描画」まで発展させたいと語った。
6年生では、プログラミングロボット「mBot」を活用する予定で準備を進めている。「5年生はプログラミングソフト上で、6年生は実物をプログラミングする」という挑戦でもある。算数「比を使って考えよう」から発展して「総合的な学習の時間」で「比を使って計算した数値」を元にロボットカーをプログラミングする。理論上はうまくいっても、ロボットなどの実物を動かそうとすると、電池の残量やモーターの動きなどの個体差があり、様々な誤差が生じる。そこで、例えば「90度曲げる」ためにどのようにプログラミングするべきか、計算に基づいて数値を入れ、実行して修正する、という展開を予定している。
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年11月5日号掲載