今年度第1回(通算第49回)全国教育委員会セミナーが7月5日、東京で開催され、東京都内の教育委員会や学校が導入事例や予算確保などについて報告した
21世紀型スキル、汎用的スキル、非認知スキルの育成など積極的に教育改革を進めている戸田市のICT教育は今年3月、関東圏内で小学校1位、中学校2位となった(日経BP社調査)。教育ICT環境はエビデンスベースによる整備を行う方針で、ChromebookやiPad、無線LANやLTE他、様々な検証を実施。今夏には、文科省の新しい整備指針である「3クラスにつき1クラス分の学習者用PC整備」に向け、小学校に2000台のタブレット型PCを整備。中学校も順次導入を進める。
注力しているものの1つがプログラミング教育だ。戸ヶ﨑教育長は「プログラミング教育は、教育改革の足掛かりになる」と語る。教員にとってカリキュラム・マネジメントの足掛かり、授業改善のきっかけづくりにつながり、児童生徒にとっては、自ら課題を見つけ、対話しながら解決するアクティブ・ラーニング(A・L)を進める中でプログラミング的思考を育むことができる。
「小学校プログラミング教育の手引(第一版)」が取りまとめられ、様々な例示が示されたが、具体的な取組を各学校単位で考えることは難しいと考え、戸田市では、プログラミング・ICT教育推進委員会を立ち上げ、積極的に企業と連携しながら、小中一貫のスタートアップカリキュラムを作成した。小学校1~3年生がアンプラグド教材、4年生から中学生はScratchを教材に3時間設定し、今年度から開始。平成32年度には4年生以上が10時間実施となるよう段階的に時数を増やす。指導用の参考テキストも作成するなど、今後、教科におけるプログラミング教育を円滑に進めるためのミニマム・スタンダードとして、主たるプログラミングスキル等の習得を目指している。
「学ぶ内容は統一、学ぶ教材は各校それぞれ」という点も特徴だ。連携企業等との共同研究により情報を各学校に提供し、各学校がBee-BotやKoov、アーテックロボ他、様々な教材を選択して取り組んでいる。
産官学民連携は戸田市の教育改革の柱の1つで、プログラミング教育以外でも様々な連携が進んでいる。現在、NPO法人を含めて約70社と連携して最先端の協働研究に取り組んでおり、Edtechなどの「最先端」を積極的に取り入れることや、効果検証ができる基盤づくりなどに役立っている。「医師がカルテを見ながら処方するように、教育効果を検証できるプラットフォームを構築したい。経験や勘、気合いによる教育からエビデンスベースの教育を目指す」と語る。
A・Lのルーブリックづくりについても着手。戸田市教育研究集録としてWebに掲載している。
教育行政のプロ採用も開始。国の研究機関と対等に渡り合える「戸田市教育政策研究所」づくりに取り組む。
新しい取組を学校現場で試行したい企業は多い。その実証の場=クラスラボを提供することで企業連携が広がった。取組についてはSNSなどで教育長自らがほぼ毎日情報発信し、理解者を増やしていく考えだ。
【講師】戸田市教育委員会 戸ヶ﨑勤教育長
【第49回教育委員会対象セミナー・東京:2018年7月5日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年8月6日号掲載