教育委員会対象セミナー・福岡 ICT機器の整備計画/校務の情報化
熊本県教育庁 教育政策課 山本朋弘指導主事 |
熊本県教育政策課では、「21世紀にふさわしい学び・学校を創造する」をテーマとし「情報教育の推進」「授業でのICT活用」「校務の情報化」を進めている。
2年目となった「未来の学校創造プロジェクト」では、タブレット端末・PCや電子黒板、学習者用デジタル教科書などを活用した授業の効果測定を行った。その結果、ICTを活用した授業の方が、児童生徒の客観テスト、意識調査、共に向上。教師のICT活用指導力も向上した。
実際にどのような授業が行われているか。
山江村の山田小学校では、子供たちがタブレット端末を活用するだけではなく、教師の板書計画も研究。人吉東小学校では、学習者用デジタル教科書を試用し、1人1台環境で実証を進めた。また、県立宇土中学校では、理科の授業で天体の緯度経度を入力し、移動の様子を可視化。ホワイトボードなどアナログツールも活用している。
授業中にどの程度の時間タブレット端末を活用しているかについて、110の授業映像から計測。その結果、平均で16・2分、最小で2・1分、最大で34・0分。実験で録音するといった授業では長いものの、活用場面が絞られていることがわかる。
客観テストの検証では、単元の前半と後半で活用するクラスを分けて効果測定。その結果、全体で8ポイントの有意差が確認された。意識調査も同じく、活用した授業のほうが高い結果が得られた。
さらに取り組みが3年以上経過している地域に学力調査結果の比較を依頼したところ、年度が進むにつれレーダーチャートが年々広がっており、学力が全般的に伸びてきていることがわかった。
目的は、ICTを活用した授業改善だ。単にICTを活用すれば良いというわけではない。デジタルとアナログの併用も踏まえた授業デザインが重要で、電子黒板だけを活用するのではなく、板書を工夫しながら、何をどう見せるかといった点を大切にしている。授業でのICT活用は、板書法やノート指導、学習規律など、従来の指導方法の振り返りにもなり、ここにこそ大きな意義があると感じている。
新たな学びへの対応として、地域学習でタブレット端末を携帯する、自宅に持ち帰るといった取り組みも行った。高森中学校では、地域や家庭でのインタビューを記録。学校に持ち寄り、グループでまとめた。
家庭でのeラーニングは、県のシステムにアクセスして活用する仕組みだ。例えば、授業の板書を教師がアップして子供たちは家庭で振り返る。現状、全ての家庭がインターネット接続できる環境ではないので、朝の時間に実施するなどの補完措置も提供している。
遠隔地間での継続的な交流学習では、県のテレビ会議システムを活用。災害時なども、県立学校を繋いだテレビ会議を活用している。
リーダー育成、ICT活用・授業研究、情報安全教育、校務情報化など様々な教員研修も実施しているが、多忙な教員を集める時間の確保などの課題もある。そこで、参加体験型の出前研修、テレビ会議システムの活用、eラーニング研修などを行っている。
授業でのICT活用は、現場のアイデアや意見を基にした合意形成が重要だ。ポスター発表などを取り入れている。テレビ会議により、遠隔地の学校間の校内研修を繋ぐことで、小規模学校の先生同士が意見を交わし共有する場も用意している。
無線LANの接続障害や教材データの配信不可、コンテンツの不足、教員の負担増といった課題も見えてくる。効果だけではなく、失敗例や課題についても取りまとめたガイドブックを制作中で、今年度中に公開する予定だ。(講師=熊本県教育庁教育政策課・山本朋弘指導主事)
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【2015年3月2日】
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