教育委員会対象セミナー・福岡 ICT機器の整備計画/校務の情報化
佐賀市立西与賀小学校 江口浩文校長 |
フューチャースクールの研究指定を受け、児童1人1台のタブレット端末活用を開始した佐賀市立西与賀小学校(江口浩文校長)では、現在計約350台のタブレットPCを活用している。実証事業のための授業研究に向けて、「教員がゆとりを持って授業や教育に取り組むために校務の情報化は欠かせない。管理職がしっかりと教員の時間管理をする必要がある」と考え、ほぼ同時期に学校独自で校務支援システムを導入した。
平成23年度の校務支援システム導入に向けて、その狙いと内容を学校経営方針に位置づけ、保健室データと連携した名簿の一元化や通知表に着手。学期末の処理業務や学年末、学年始めの学級業務を効率的に遂行し、子供と関わる時間を確保するとともに、教員の多忙感の軽減に努めた。現在、教職員の退勤時刻は午後6時30分。それ以降になると校内は誰もいない。
校務情報化推進の留意点は、管理職が強い信念を持って進めることにある。校内にはベテラン教員も多く、通知表を使い慣れたソフトから校務支援システムに変えることに不安の声もあった。しかし、「絶対にプラスになる。多忙感も解消される。信じてついてきてほしい」と教職員の不安を払拭して推進した。
校務支援システムの設定、名簿の一元化の項目設定、名簿作成、通知表のレイアウトなどは管理職・教務主任が行い、日々の記載や通知表の評価項目を担任が行う。名簿の一元化により、年度初めの進級処理・名簿の作成が効率化し通知表の諸項目への転記も容易になった。保健室の記録簿と担任の持つデータが一元化されたことで、保健室来室記録などのデータも転記できる。さらに、評定、成績のグラフ化、指導要録への転用、全児童の読書冊数なども通知表に記載し、学校の取組を保護者に明示している。
教員が日々記載していくだけで、通知表の所見ができていく。養護教諭が入力したデータや児童全員の出欠状況も教員や管理職が共有できるなど、業務が効率化し、校門指導時の声かけにも活かされている。学校課題や子供のがんばりの「見える化」にもつながった。
システム導入後、ベテラン教員は「多様な視点での見取りを所見に活かすことができた」、「学年末は休日返上で作業していたが、校務支援システム導入後は3学期分の通知表所見を参考にして指導要録の総合所見を作成でき、便利になった」、「通知表や指導要録に記載するときに、児童の顔写真があって書きやすい。担任としての事務処理が軽減された」などと述べている。
「校務の情報化は教員がツールとして使いこなしてこそ生きる」もの。それを実現するためには、(1)ワンソース・ワンマスター(データベース、情報が共有されるシステム)、(2)難しい操作を要さないシステムの2点がポイントだ。今後は、「日常の中で計画的かつ勤務時間内で作成できる通知表と指導要録」、「全職員が関わり、全職員で作る通知」、「デジタルになることで文章が長くならないよう、手書きのよさを忘れず、短い所見で的確に表現する」など、校務の情報化を学校経営の柱に据え、効率化に向けてさらに推進していく。(講師=佐賀市立西与賀小学校・江口浩文校長)
【第21回教育委員会対象セミナー・福岡:2015年1月29日】
【2015年3月2日】
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