教育委員会対象セミナー・福岡 ICT機器の整備計画/校務の情報化
堺市教育センター 浦嘉太郎主任指導主事 |
堺市では「情報教育」、「教科指導におけるICT活用」、「校務の情報化」の3本柱で「教育の情報化」を進めており、「校務の情報化」については、教職員1人1台の校務用PC配備やネットワークドライブの整備、グループウェアや文書管理・出退勤・指導要録の電子化、各種手続きのWeb化などに段階的に取り組んでいる。
学校HPで情報発信
市では平成18年から市立学校園全校でCMSを導入して学校HPを運用している。
学校HPの役割は「開かれた学校園づくり」と「積極的な情報発信」の2つ。この目標達成のため、保護者が求めているHPは何か、いつ誰がそれを掲載していくのかなど、内容・運用両面で検討。学校CMS「スクールWebアシスト」を導入して、更新作業の煩雑さや作業の集中などこれまでの課題解決に取り組んだ。これにより、技術的なスキルをそれほど必要とせず多くの教職員で記事作成ができ、かつ校外学習や修学旅行先でもスマートフォンなどにより更新できるようになった。新着記事の上位100件を時系列に並べたサイトも公開しており、全校の学校HPの最新情報やその日の他校の様子も分かるなど、学校HPの目標達成が容易になったと感じている。
指導要録を電子化
平成22年度より、学校と教育委員会間の文書事務の電子化に取り組んでいる。通知表や指導要録の電子化については平成27年4月から全校一斉に稼動を開始する予定で、現在学校説明会などを実施。各校では通知表様式の検討などに取り組んでいる。平成28年度からは、全教員に配備したタブレットPCから出欠状況を入力して出席簿の電子化までできるようにする計画だ。
タブレット端末の活用状況を調査
堺市では「堺スタイルのタブレット整備」として平成25・26年度に、教員の指導用タブレットPC2000台を整備。既に整備済みの大型デジタルテレビと連携して一斉提示などで活用しやすくした。整備の活用検証として、教育センターでは「自分の教室で授業を行った」際にタブレットPCがどれくらい活用されているのかについて、平成26年2月と6月に小学校全担任約1400人を対象に調査を行った。それによると、2月は44%・5968時間の授業で、6月は52%・6837時間の授業でタブレット端末を活用していた。
2月当初は60%程度の授業で活用しているという教員が多かったが、6月には70%以上活用している教員が大幅に増え、95・4%の教員は1回以上の授業で活用していた。最も多いのが、デジタル教科書の活用だ。次いでデジタル教材の活用、カメラ・ビデオ機能の活用など。
タブレットPCを活用することによる効果についても調査。「子供の集中力向上」「学習内容の共通理解」「ノートの提示などによる発表機会の増大」「負担軽減」「学習状況に合わせた資料提示」などに効果がある一方で、個別指導の充実への効果については、どちらともいえないという回答が多かった。これら調査結果から、タブレットPCの活用は予想以上に進んでいるが、ほとんど活用できていない教員も数%ながら存在すること、個別指導や負担軽減への効果が実感できていない教員が多いことがわかり、本当に効果的な活用がなされているかについて調査・検証の必要性があると考え、「タブレット活用プロジェクト」を始動した。
中学校も整備予定
タブレット活用プロジェクトとは、堺スタイルによる効果的なタブレット活用方法を研究するもの。中川一史教授(放送大学)との共同研究だ。研究員として18名の小学校教員が参加し、9月から11月にかけて18本の授業を実施した。この研究成果は動画や電子データにまとめ、全小学校にフィードバックしていく計画だ。来年度以降、小学校にはデジタル教科書を一斉に配備していく。中学校でのタブレット端末整備にも着手して子供1人1台環境に向けた調査・研究を行うとともに、校務支援システムと連携させていく考えだ。(講師=堺市教育センター・浦嘉太郎主任指導主事)
【第21回教育委員会対象セミナー・福岡:2015年1月29日】
【2015年3月2日】
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