【ICT活用指導力を育む】国立大学附属小・中学校のICT環境

教育実習生にICT活用を義務化 実習生のトライ&エラーが刺激にー信州大学教育学部

信州大学教育学部では、充実したICT環境を整備し、教員養成学部学生のICT活用授業力を高める試みに取り組んでいる。信州大学教育学部・附属教育実践総合センターの東原義訓教授と同学技術教育グループの村松浩幸教授に、同学及び附属学校園のICT活用と教員養成について聞いた。

■1人1台環境で学習ー附属長野小学校
信州大学教育学部
iPadに自分の考えを記入し電子黒板で全員の意見を共有する
信州大学教育学部
弓のこで金属を切断している姿勢を撮影し合い動画を確認してアドバイス

信州大学教育学部附属長野小学校では、平成24年度後期にタブレット端末(iPad)48台、タブレット型PC54台、デジタルペン42台、電子黒板7台を導入し、全4学級で同時に1人1台環境での学習が出来る環境だ。初年度は、公開授業などで主に教員が提示用に活用。平成25年度からは、教育実習生(3年次に4週間強、4年次に2週間実施)にICT活用の授業実践を義務付けた。昨年は教材提示が多かったが、今年度はタブレット端末を活用した取り組みが増えた。実習生は、電子黒板での教材提示や書画カメラを用いた児童の操作やワークシートなどの全体共有、1人1台端末でそれぞれの考えを記述してタブレット学習システムにより全体共有、話し合うなどの授業を実践。初年度、教育実習生はICTの授業活用についてICT支援員に質問していたが、今年度は積極的に指導教員が加わるようになり、学校全体のICT活用が大きく進むきっかけの一つになった。

■iPad40台を活用ー附属長野中学校

附属長野中学校では、昨年度末までにタブレット端末(iPad)40台と無線LAN環境を整備した。これにより今年度、中学校でも教育実習生の積極的なICT活用が見られた。

技術科ではタブレット端末のカメラ機能の活用をきっかけに「生徒の学び合い」が生まれたという。それは実習生が事前に想定した「学び合い」ではなかったが、タブレット端末が生徒の「学び合い」を自然発生させるきっかけとなった授業シーンは、その場の教員にとっても刺激になったようだ。

教員養成学部のICT環境を充実

教育実習生の授業におけるICT活用は、信州大学教育学部長野キャンパスの教員養成に向けたICT環境の充実が礎となっている。同学教育実践センターのPC室は1人1台の学習者用端末を最大40人が活用でき、学生はPCコーナーを21時まで自由に使うことができる。この端末やPCには県下の学校に導入されている教材がインストール。学生は、キャンパス内と長野小・長野中校内の無線LAN環境において自分のPCや端末を持ち込んで授業や教材研究を行うことができる。Web上での資料ダウンロードやレポート提出、ディスカッションも日常的に実施。2年次の必修科目として、教科教育等の教員がICT活用の授業も担当。土曜日の集中講義には、県下各地の指導主事や教員が外部講師として4コマの授業を行い、教育実習に接続している。

タブレット端末活用は、いまだ黎明期。黎明期ならではのトライ&エラーや学び合いには、教員自ら飛び込む必要もある。実習生が自由な発想でICTの授業活用にトライする姿は現場教員にとっても新たな気付きのきっかけになる。

附属学校園6校間のICT環境を強化

信州大学教育学部では今年4月から、「附属学校園ICT活用連絡会」(代表=畔上一康長野小副校長)(以下、連絡会)を立ち上げ、附属学校のICT環境整備や活用などについて検討、情報共有を行っている。これまでは各学校園個別に取り組んでいたが、連絡会によって附属学校園6校間の情報共有と相互連携を図る。その一貫で「信州大学教育学部附属学校園ICT活用サイト」(http://cert-shinshu-u.info/fuzoku/)を立ち上げ、各校や教育実習のICT活用の様子を紹介、共有を図り始めた。

今年度は、附属松本小・中においても各教室にプロジェクター(電子黒板機能付き)を設置、タブレット端末と無線LAN環境を整備する計画だ。タブレット端末は各40台を、小中学校に整備。教育実習生が私物の端末を校内無線LANに接続できる特別なネットワークも整備。将来は児童生徒のBYODも視野に入れている。

【2014年9月1日】

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