【ICT活用指導力を育む】教員養成学部と附属学校の連携を強化

「学び続ける教員」「教員養成の高度化」をキーワードに様々な大学で教育の情報化に対応した教員養成が着手されており、教員養成学部との連携を図る目的で附属学校におけるICT環境の進捗が見られる。教育実習生にICT活用を課したところ、学校全体のICT活用の取り組みが向上した例もある。国立大学教員養成学部のICT活用指導力の育成と附属学校のICT環境の連携について取材した。

附属学校部との連携を強化ー奈良教育大学

京都教育大学、大阪教育大学、奈良教育大学の三大学は、京阪奈三教育大学教員養成・研修高度化事業として、「教員養成の高度化と教職生活全体を通じた学びを継続的に支援するシステム」(平成24〜26年度)に取り組んでいる。各大学には「教員養成高度化連携拠点」を設置。京都教育大学には「教職キャリア高度化センター」、大阪教育大学には「教員養成高度化センター」、奈良教育大学には「次世代教員養成センター」が設置され、各教育委員会や各学校現場等と協働しながら開発を開始している。

奈良教育大学
次世代教員養成センターには電子黒板やプロジェクタ一等を活用できる模擬授業室がある
奈良教育大学
附属小・高学年普通教室に70型電子黒板と短焦点プロジェクターを設置

奈良教育大学では、「21世紀にふさわしい学びを担う教員養成のための情報基盤整備」(2012)、及び「学び続ける教員のための教員養成・研修高度化事業」(2013〜2017)(※)も合わせて展開。以下に取り組む。

▽教科指導や子供の情報活用能力育成に寄与するICT活用指導力を持つ教員の養成 ▽課題探究学習型の教育ができる教員の養成 ▽実践的指導力を持つ教員の養成 ▽学び続ける教員の養成

これらに向け、将来を展望した効果的なICT設備として、講義室等への電子黒板やタブレット端末、模擬授業収録設備、各校種・デジタル教科書類の収蔵とともに、学校現場と同様の模擬授業設備も充実。

附属学校園のICT環境については、平成25年度に附属中学校、小学校の全教室に書画カメラ、電子黒板等を整備。これらのICT機器やタブレット端末を活用した公開研究会を実施した。

また、公立学校とも連携して、タブレット端末を活用し、学生による数学の授業や教員対象の講習会を複数回実施。赤外線カメラや3Dプリンターを活用した学生実験等も試行している。附属学校部には、タブレットPCの授業活用やICT機器の利用に関する委員会(11名で構成)を発足させ、教育実習等での指導力向上に向けた試行を始めている。

平成26年度はこれらを踏まえ、日常的にタブレットPC等を活用するための好事例も収集中だ。現在、教員のICT活用指導力向上に向けた教員研修のために、文科省が4年前に開発した「ICT活用指導力向上研修」用テキスト及び支援サイトを改訂中で、今年度秋には公開を予定。ICT支援員の育成カリキュラムの開発や認証の仕組み作りにも着手している。

(※)富士通、奈良県、奈良市との連携による「Tablet PC等を活用した教員養成カリキュラム開発プロジェクト」と連携

■学習者用端末220台 ICT支援員は週5日ー奈良教育大学附属中学校

平成25年度より順次ICT環境を整備。

今年度は、タブレット端末の一部と電子黒板、無線LANを整備した。書画カメラや液晶テレビなども設置。

▽電子黒板=電子黒板機能内蔵型プロジェクターを全普通教室及び特別室に計26台、固定で設置(普通教室、特別室) 
▽タブレット端末=Windows8を132台、iPad85台 
▽無線LAN=AP28台 
▽ICT支援員=常駐(週5日・7時間勤務)

■理科室に4Kテレビー奈良教育大学附属小学校

理科室のICT環境整備が先行し、平成25年度に普通教室や特別教室・多目的スペースの整備が進んだ。

現在、5〜6年6学級と理科室2室は、天吊固定したプロジェクターとマグネットスクリーン、70型電子黒板、実物投影機を設置(写真)。1〜4学年は移動式プロジェクターと実物投影機、60型液晶テレビ、マグネットスクリーン。音楽室は天吊固定式プロジェクター、ホワイトボード、映像及び音響設備。平成26年度中に理科室のテレビが4Kテレビになる予定。

▽プロジェクター=短焦点・移動式12台(1〜4年・12学級)、短焦点・天吊固定12台(5〜6年・6学級/理科室2室/音楽室2室/多目的スペース2)
▽電子黒板=12台(5〜6年・6学級/理科室2室/多目的スペース2/図画室/体育館)
▽タブレット端末=校務用35台(校務支援システムを平成26年度から導入)・授業用90台 
▽無線LAN環境=AP22台。全学級・特別教室で使用可 
▽ICT支援員=常勤(月〜金)
▽実物投影機=25台(全18学級・理科室2室・図画室・通級指導教室2室・多目的スペース2)

【2014年9月1日】

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