教育委員会対象セミナー名古屋 ICT機器の整備計画/校務の情報化

「わかる・できる授業』を推進 全教室のデジタルテレビを電子黒板化、デジタル教科書の活用―岐阜市教育委員会 淀川雅夫氏

  岐阜市(総人口41万人・小学校47校・中学校22校・特別支援学校1校・高等学校1校)では教育立市を掲げる取り組みの1つとして、ICTを活用した「わかる・できる授業」を目標に、教育予算を確実に確保、各種整備に取り組んでいる。ICT整備によって子どもたちに期待される効果、教員研修、現在の環境に適合する機器やソフト、その費用について検討・仕様書を作成して予算化し、議員や市民に説明、議会の承認を得て整備を進めている。

  現在は、市内すべての学校に導入されている1935台のデジタルテレビ(50インチ)を電子黒板化して全教室に配備。多くの教員から要望があったデジタル教科書(小学校=国語、算数、理科、社会)(中学校=国語、数学、理科、社会、英語)も全学年に整備。

  デジタル教科書はネットワークハードディスクを含めて導入。小学校は学年フォルダを、中学校は、各教科フォルダを作成してデジタル教科書を格納し、各校からアクセスして使えるようにしている。

  しかし、整備以前に多くの教員から不安の声が届いていた。その不安の払しょくに関しては、各種研修等で対応した。まず電子黒板等の全教室整備に向けて7月末に市内教員の約3割が集まる教育課程研究協議会において、電子黒板を披露。

 育長や学校指導課長が電子黒板を使って講話したが、操作に関する技術は10分程度で身に付け、簡単に使えるものだという印象を与えた。その後の分科会では、参加した教員たちも電子黒板を活用し、日頃の実践を発表し交流したほどだ。

  8月にはデジタル教科書活用研修と、各校の情報主任を対象とした電子黒板活用研修を実施。この内容を受けて各校で情報主任による校内研修をお願いし、さらに各校から要請があれば、指導主事による出前講座も行った。

  研修で、まずこれだけは習得を、とお願いしたのが、電子黒板への「書き込み」「提示資料拡大」「資料保存と呼び出し」の3つ。多機能を備える電子黒板の中でも、授業で最低限必要な技能と考え、活用を推進した。導入が始まって間もなく、市内に活用が広がるようになり、教員だけでなく児童生徒も活用する場面が見られ、また、自作教材の作成も自発的に行われるようになった。

  電子黒板やデジタル教科書の活用がすぐに広がったのは、電子黒板導入以前にICTの授業活用が浸透していたことも大きい。岐阜市では、市の教員が中心となって、岐阜市版教師用指導書「指導と評価の計画」(小学校版・中学校版)を作成しており、ここにはICT活用を毎時間位置付けている。また、学力向上に向けて、電子黒板で活用できるフラッシュ型デジタル教材「リピランぎふ」を市独自で作成しており、基礎基本の定着を図っている。さらに、実物投影機の活用が浸透しており、テレビ画面に教材を大きく提示する効果や指導方法が教員に定着していた。

  これに電子黒板とデジタル教科書が加わることで、電子黒板に書き込み合い、話し合う活動を通した学び合いや、書き込み画面の保存による事後の振り返りがしやすくなること、デジタル教科書に格納された各種教材が広く活用できるようになり、さらに「わかる・できる」授業が実現できると考えている。

  今年度は、電子黒板の推進校を指定して学校としての実践を公表する機会を1月中旬に設けた。児童から「勉強が楽しくなる」「みんながわかりやすくなる」「学校の道具だから大切に」「使わないともったいない」という声もあり、教員のICT活用率も前年度調査と比較するとさらに向上し、児童のICT活用指導については95%が、授業中のICT活用は99%ができるようになったという内容だった。

  全校に導入が完了したのは11月だが、早期に導入を完了した学校を対象にアンケート調査を行ったところ、96%の子どもが「楽しい」、98%が「わかりやすい」と答えている。全校調査はこれから行う予定だ。(講師=岐阜市教育委員会指導主事 淀川雅夫氏)

【教育委員会対象セミナー・名古屋:2014年2月14日】

【2014年3月3日】

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