教育委員会対象セミナー名古屋 ICT機器の整備計画/校務の情報化

校務支援システムの文書連絡機能を活用して、文書管理を見える化する―大田区教育委員会 学校職員担当課長 室内正男氏

  東京都・大田区(小学校60校・中学校28校・教職員数2507人)では、校務支援システムの文書連絡機能を活用することで「文書管理の見える化」に取り組んだ。

  「文書管理の見える化」とは、学校内で教育委員会から送付された公文書の処理が、今どのような状態にあるのかについて、校務支援システム上で全て見えるようにしたことだ。それによって、文書管理に係る校務事務の時間の短縮・効率化を図った。

  最初の一歩は、校務支援システム上での作成文書を「公文書」とするための地固めだ。これまで、公文書は「紙」のみ。そこで電子データを公文書として認めるよう、学校文書管理規程を改正。規程の中に、「電子文書」という用語とそれを扱うシステムの規程を追加した。

  文書事務の手引きも改訂した。学校文書の「規程」と校務支援システムの「用語」を調整して統一した。具体的には、学校文書管理規程で使っている「収受」「起案」「審議」「決定」などの用語を、「受理」「立案」「確認」「承認」などの校務支援システムの用語に対応付けて、利用者に理解しやすいようにした。

  また、校務支援システムで処理できない内容については、紙文書による従来の処理のままとした。「このシステムでできないことはこれまで通りの方法で良い」と最初に示すことで、利用者に安心感を与えることができた。

  これまでの文書処理の全てを校務支援システムで実現しようとすると、細かいカスタマイズが必要になり、コストもかかる。しかし年に数件のみの例外のためのカスタマイズは、コストにあわないと考えた。

  文書処理は、正しい手順で進めることが、トラブル発生を防ぎ、円滑に進めるポイントだ。そこで教育委員会事務局担当者には、テンプレートの使用を義務付けるとともに、文書を送付する際に、システムが想定している手順に則った方法で進めるための研修を行った。

  また、全校の担当者に導入前研修を行い、あわせて、校長会、副校長会、事務職員会に出向き、役職別の操作ポイントの説明を行った。これら研修・説明を経て試行運用を行い、4月から活用をスタートした。

  研修をしたものの、当初から利用者全員がマニュアルに則った操作をするとは限らない。PC等操作に慣れている場合、独自の解釈で処理し、その結果誤った手順で行う場合もあり、その方法が周囲に広がる可能性もある。そうなると、業務の効率化の目的が適わず「システムによって煩雑になった」という印象を受けてしまう。

  そこで、誤操作には迅速に対応する必要があると考え、運用当初は処理状況を細かくチェック。異なる手順の場合にはシステム担当を派遣して個別に操作説明を行い、早期に解決するようにした。文書処理が滞留している学校の場合も同様にシステム担当者を派遣。原因を究明するなど、導入当初は迅速に学校現場の支援を行うことに注力した。

  「文書の見える化」を図ることで、例えば教育委員会が文書を校務支援システムで各学校に送付すると、学校内では、文書明細画面で校長、副校長、事務職員が閲覧した日を確認できる。続いて、その文書を副校長が担当の教職員などに再配付した際も、各教職員の回答状況や閲覧状況、承認・提出状況なども、すべてシステム上の画面でリアルタイムに見ることができる。

  一方、教育委員会事務局の担当者も各学校の提出状況を把握できる。

  校務支援システムの導入によって電子メールの送受信が増え、副校長を始めとする管理職の事務仕事が増える、という課題が指摘されることがある。しかし、文書管理の「見える化」を校務支援システム上で一貫して行うことで、公文書をメールや掲示板と切り分け、管理職、現場教員や教育委員会それぞれの校務処理の効率化を図ることが可能になった。

  紙を「電子化」するだけでは、効率化を図ることは難しい。利用者目線での「システム化」づくりが、学校現場を支援できる体制づくりに寄与できる。(講師=大田区教育委員会 学校職員担当課長 室内正男氏)

【教育委員会対象セミナー・名古屋:2014年2月14日】

【2014年3月3日】

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