影戸誠教授は、総務省「フューチャースクール推進事業」で謳われているICTを使った「協働」教育の子どもたちへの効果、影響について実例を挙げながら紹介した。
「フューチャースクール」実証校では1人1台のPCで学習者用デジタル教科書を活用し、ICT支援員がサポートしている。教員主導で授業を進める「一斉指導」、それぞれが自分に合ったレベルで学習を進める「個別学習」、他者と協力しながら学び合う「協働学習」などの授業モデルを研究しているが、影戸教授は「協働学習」に焦点をあてた。
佐賀県・西与賀小学校では、児童1人に1台のタブレットPCが配布されることで、すべての児童が集中して授業に取り組む姿が見られている。タブレットPCを児童一人に1台持たせると授業に集中することは、日本、韓国、シンガポールなどに共通して見られる傾向で、その理由を3か国とも教員が授業をコントロールする能力が高いからではないかと影戸教授は推測する。
西与賀小の児童はタブレットPCを使って、個々に答えを導き出す。そのプロセスは共有サーバに保存されるので、他の児童の解答と比較検討することもできる。
児童のタブレットPCの活用ぶりを追うと、この2年間で発信力に大きな成長がみられたという。4年生の時には問題を解き、記録することに終わっているが、6年生になると情報を相手に合わせて加工し、人に解き方を伝えようとする努力が見られる。教わった内容を受信するだけでなく、自分が理解したことを発信する能力が養われているとも言える。1人1台だからこそ、児童は試行錯誤を繰り返すことができ、集中できる。
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世界基準で学力を図るOECDのPISA学力調査でも、「21世紀型スキル」の導入が検討されている。「21世紀型スキル」では、他者とコラボレートしようとする意志や、異なる意見とも歩み寄り協力して克服していく「共に働く」、同じ世界に生きる者として互いに助け合う「共に生きる」姿勢や、ICT活用能力など「テクノロジー」に関する力が求められる。こうした「21世紀型スキル」を養うため、近年では海外の学校と交流する学校も増えている。
「言語や文化の異なる学生との協働体験を経、21世紀型スキルが着実に培われていく」と、海外の学生とコラボする体験が高い効果をもたらすと語った。
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【2013年3月4日】
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