富士市では平成23年8月から小学校27校・中学校16校の計43校・1200人の教職員を対象に1200台のシンクライアントを導入、強固なネットワークを構築して校務システムを稼働している。
整備前の富士市は、PC不足・ネットワーク未整備で教職員が個別にデータを管理しており、安全なデータ管理が難しい状況であった。そこでまず取り組んだのが、他自治体の整備状況の視察と教職員を対象にしたアンケート調査だ。既にシンクライアント導入を視野に入れていることから、長野県諏訪市を視察した。
アンケートでは、導入に期待するもの、必要な機能などを調査。調査結果によると、教職員は「校務だけではなく授業にも使える」「出席簿や通知表、調査書がデジタル化できる」「児童生徒の健康管理が分析できる」「転出入処理が容易にできる」など、様々な機能を期待していることがわかった。そこで「リモートアクセスの実施」「高機能な校務支援ソフトの導入」「PCは校務でも授業でも活用できるようにする」という方針を立てた。
導入の目的の第一は「子どもと向き合う時間の創出」だ。このほか、安全で安心なしくみや省スペース・省エネルギーも目的とした。
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今回の導入の特徴は、インフラは市の情報政策課が担当し、アプリケーションは教職員が選定することで効果的にシステム導入を遂行できた点にあるという。「教育委員会と市の情報政策部門が協力し合い、譲るところは譲り、互いのことを考えながら導入したことが成功の要因の1つ」と話す。
富士市では3種類の仮想化テクノロジを採用。シンクライアントは不自由なイメージがあるが、動かないアプリケーションはほとんどなく、スピードも遅くはないという。ただ、苦手なこともある。CDやDVDを作成することた。そこで入出力用のPCをあわせて導入、デジタルカメラのデータを読み込むなどに活用している。また、シンクライアントで稼働しにくいアプリケーションも動作させている。
ポイントとしては「ネットワークはとにかく太く」。サーバ側は高速な10Gbpsを構築。夏には学校側を30Mbpsに強化した。また、印刷物のセキュリティ強化のため、ICカード認証に対応したデジタルカラー複合機を導入。学校によっては、プリンターの場所が職員室から離れている場合もあるためだ。これにより自宅や出張先で原稿を作成、そこから印刷指示ができ、印刷物はカードをかざして本人が直接取ることができるようになった。
リモートアクセス機能は土日の利用者が多く、通知表作成の時期に多く利用されている。
コールセンターは24時間受付可で、保守員も1人市教委に駐在。システム稼働率は放課後がピークで、約40%の利用者がいる。
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さらに今年度は小学校27校においてPC室更新の際、同時にタブレットPCを配備。プロジェクターや書画カメラも合わせて配備した。来年度は中学校において同様の導入を検討している。シンクライアントによりシステムの共通化を図ることでコストが削減できるだけではなく、中学校など教科担当だけが必要なアプリケーションなどについても柔軟に対応が可能だという。深澤氏は「導入するだけでは稼働率は上がらない。運用後のルール作りが大切」と語った。
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【2013年3月4日】
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