県内屈指の進学校として、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定も受ける水戸第二高等学校は、明治33年の創立以来、読書指導にも力を入れてきた。同校の学校図書館の蔵書数は約4万冊、高校の平均蔵書数2万5524冊(2014年・全国学校図書館協議会調べ)と比較するとその充実ぶりは明らか。豊富な図書資料を活かして磨くのは、調べ・考え・まとめる力、そしてプレゼンテーション力だ。
■「総合」で探究的学習
学校図書館を中学生が見学。(上)同校の生徒は 実質女子のみ。いわゆる「リケジョ」の学校だ 。 環境科学で使用する4種の自然科学、環境関 連の本が充実 |
同校には1年生、2年生それぞれ「総合的な学習の時間」で、図書館を活用した探究的学習の独自のプログラムがある。
1年生は道徳の課題として14時間を使い、「START(Students Talk about Reading Theme)」プログラムに取り組む。目的は(1)自分の興味のある人物を調べることで、生き方あり方を考える、(2)図書館を活用した「課題研究」を行うことで、思考力・判断力・表現力を育成する、(3)第三者に伝えるプレゼンテーション力の育成、の3つ。
学校図書館を活用し、テーマの決め方、図書資料の探し方、資料の引用の仕方や参考文献の記入の仕方などを学びながらまとめていく。発表の際にはパワーポイントでスライドを6〜10枚作成、発表5分、質疑応答2分を一人ずつ行う。服装や質疑応答のやりとりなど、発表マナーも指導される。
生徒からは「まとめ方や発表の仕方が理解できた」などの声が聞かれる。
勝山万里子学校司書は「自分自身の発表はもちろん、クラスメイト40人分の発表を見ることも経験の蓄積となり、より良いプレゼンテーションとは何かを学ぶ」と話す。
2年生は今年度から、「世界に伝える私たちのニッポン!」をテーマに取り組み、こちらもパワーポイントを使った発表までを行う。調べる方法は本や雑誌、データベース、Webがあり、データベースは「朝日けんさくくん」に加え、今年度は「ジャパンナレッジ」も導入した。「信頼できるデータベースを使う体験が必要」と勝山学校司書はその理由を話す。
また平成18年に同校がSSHに指定されていたことも、プログラムを後押ししている。生徒が学びの成果を発表する機会も増えた。
「SSHとして学校図書館をもっと上手に活用したい」という課題を抱えつつ、平成23年度にはSSH第二期のスタートを切った。だが、3月には東日本大震災が発生。同校も被災し、生徒たちは生きることや将来への不安を抱いていた。
4月、同校に異動してきた勝山学校司書はそんな生徒たちの様子を見て、「彼女たちが生き方、あり方を考える機会として、学校図書館を活かしたい」と考え、STARTプログラムを考え始めたが、「その背景にはSSHの環境があったことが大きい」と言う。震災の影響で、SSH準備室が司書室の隣に来たことも一因となった。1年次のSTARTプログラムを経て、2年次のSSHで生かせるようにプログラムを練っていった。
勝山学校司書(写真左)と図書館主 任の海野幸雄先生 |
入口には「あたらしい本」「修学旅 行」「図書委員がすすめる一冊」と いったコーナーが目を引く |
SSH指定校ならではのプログラムは現在、同校の学校設定科目「環境科学」(「情報」の教科に該当)で取り組んでいる。履修する2年生は各自が調査・研究したものを発表する。SSH担当の高木昌宏先生は「1年生でSTARTプログラムを行うため、環境科学では図書館を使った探究的学習がスムーズにできる」と話している。
■図書委員が伝えたい事
取材時は学校公開日で、学校図書館にも多くの中学生が見学に訪れた。図書委員による説明会も実施。最初に取り上げたのはNDC(日本十進分類法)についてで、書架の各分類番号のそばに生徒が立ち、番号を説明する工夫を凝らした。ブックカバーをかけるワークショップ等も行い、中学生の緊張もほぐれていった。
学校図書館の説明会は今回が初めてで、テーマや方法は図書委員の生徒たちが考えた。「学校図書館を活用して何が一番役に立ったのか」を話し合った結果、「NDC」が挙がったという。NDCを知ることで、調べたいことがすぐに見つけられ、図書資料からは信頼できる情報を得られる。その基本を、探究的学習を通じて生徒たちは実感したのだ。中学生に向けて学校図書館を「プレゼン」する体験もまた、生徒たちを鍛えていくのだろう。
【2015年9月21日号】