学校図書館訪問記(5)

立教女学院小学校編(東京都)

蔵書充実と使い易さで授業とイベントを支え 本に親しむ環境整える

子供たちが積極的に本に親しむようになるために、環境を整える。それは容易ではない。立教女学院小学校の学校図書館は1945年、終戦後の学級文庫から始まった。55年には4年生以上が使う図書室が誕生。2000年に新築された図書館では、3年生以上の児童がじっくり本を選んだり、友達と一緒に本を楽しむ姿があり、授業では多様な活用が見られる。

図書室
図書室 カウンター
カーペットが敷かれた学校図書館。児童が頻繁
に訪れる。(写真下)児童自身が貸し出しの手
続きを行う

■図書資料を豊富に揃え コンピュータで一元管理

三方を窓に囲まれた、明るく開放感のある学校図書館。施錠はせず、休み時間や放課後に気軽に児童が訪れることができる。木製の書架と、床全体にカーペットが敷かれた温かみのある空間で、床に座って読書を楽しむ児童の姿も見られる。取材時は中休みの約15分で、30人ほどの児童が訪れていた。雨の日の昼休みには100人位が訪れるという。

20年ほど前から調べ学習に積極的に取り組む同校。そのため図書資料の充実を図っており、本宮美智子司書教諭は「本は生ものなので、目についた本はなるべく購入するようにしてきた。必要な時に本がないと、学校図書館は継続して使われなくなってしまう」と話す。

一方で、戦後に始まった学級文庫の伝統も生きており「図書教育」を大切にしている。低学年はいつでも本が手に取れるよう、1、2年生の教室前の廊下に書架があり、各学年1000冊ずつ用意されている。現在、学校図書館と学年文庫を合わせた蔵書数は、2万冊を超えた。

豊富な図書資料は、1992年からはコンピュータで一元管理を行っており、本の検索も容易になった。現在はキハラのシステム「ELISE‐Egg」を使用。図書館では児童が自分で本のバーコードを読み取り、本の貸し出しや予約の確認、検索なども行うため、小学生でも使いやすいシステムを選んだ。児童用の検索専用PCは、勝手にシャットダウンできないように、画面に現れない隠しアイコンとなっている。

本宮美智子司書教諭
本宮美智子司書教諭

また、カウンターのPC2台は「貸出」「返却」など作業ごとに画面の背景の色が変わり、児童が操作する際に「いま何の作業をしているのか」が分かりやすい。6年生の卒業時には、貸出し記録を出力し、プレゼントしている。

■本へ多様なアプローチ 作家のお話や展示販売も

学校図書館の管理・運営、資料の受け入れと廃棄、利用指導などは、本宮教諭が一手に担う。各教科の調べ学習のための本は、授業者と打ち合わせをして準備し、杉並区立中央図書館から団体貸出を受けることもある。

本宮教諭は「読書の授業」を受け持つ。1〜4年生の国語の授業として、週1時間を設けている。1年生では本の扱い方をはじめ、言葉の表現、2年生では世界や日本の昔話などに親しむ。

3、4年生では、図書館の利用方法、日本十進分類法、百科事典の使い方などを学び、さらに落語の発表会や「作家のお話を聞く会」も開催。これまでに、谷川俊太郎氏、故・寺村輝夫氏、角野栄子氏らが登場。作家と児童が膝を突き合わせて話す時間を大切にしている。

学年文庫
1,2年生の学年文庫

全学年を対象にした取組は、まず、毎年6月に開催する「本のひろば」が挙げられる。児童図書の展示・販売会で、300冊ほどが並べられる。児童と保護者は本を手に取り、選んで注文する。「友達や家族と、本の楽しさを分かち合う場でもある」と本宮教諭。

保護者が子供の頃に読んで面白かった本、友達同士でお勧めの本についてなど会話が弾む。1995年から始まったこの取組は、最初に協力した書店が閉店した後も、別の書店の協力によって継続している。

他にも、ボランティアによる「おはなしおばさんによるお話会」を年に数回、「読書週間」には「学校図書館に入れて欲しい本投票」などイベントを数多く開催する。

本を揃え、空間作りをし、読んだり調べたりする授業をする環境作りに加え、「作家のお話を聞く会」や「本のひろば」といった学校の外との交流もある。こうした取組は時間をかけて築き上げられた。多くのアプローチを通じて、児童は本に親しんでいる。

 

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【2015年7月20日号】

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