図書館で図書資料を早く・見つけやすくするために、図書の仲間分けをした決まりである「日本十進分類法(NDC)」。「0類:総記」「1類:哲学・宗教」などと書かれた掲示を見かけるが、その利活用の方法を理解し学習に生かしている教員がどれだけいるだろうか。3桁の数字で表し、図書資料はこの分類にのっとって図書館に配架される。NDCを知ることで、調べ学習がスムーズに進行し、学びが深化する。
【仕組みと概要】
【NDC(日本十進分類法)の歴史】 森清(1906‐1990)が、アメリカのデューイ(1851‐1931)によって創案された十進方式を参考にして考案したのがはじまり。現在は(公社)日本図書館協会が改訂・提供している。昨年末、19年ぶりに改訂10版が刊行された。1948年の「学校図書館の手引き」(文部省)に掲載され、学校図書館で広く採用されるようになった。 |
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図書館の本の背表紙下方に貼られたシールには3桁の数字や文字が記載された「所在記号(請求記号)」がある。上段の3桁の数字が「分類記号」を示す。 左図の記号は「468」と書いて「よんろくはち」と読む。 |
■図書館の図書資料は、資料の増加や多様化などに影響されないよう分類し、誰もが検索できるようにする必要がある。日本十進分類法(NDC)は、学校図書館、公共図書館のほとんどが採用しており、実質的な標準の分類法となっている。
NDCは、本の主題別に9つの分類に分け、どれにもあてはまらないものを「0」にして、合計10の「類」に分けられている。「類」の中でそれぞれ詳細な「綱(こう)」「目(もく)」の順に割り振られている(※右図参照)。
図書館の図書資料の背表紙に貼ってあるラベルは、「所在記号」が記載されている(※下図参照)。所在記号の上段には分類記号(NDCで分類した数字)が記載されている。図書資料の配架は、基本的にこの所在記号に沿って行われる。書架は図書館の入口の左側から時計回りに、0類から順に配置する。図書資料は所在記号順に、左から右、上から下へ配架される。
配架の原則に沿って、それぞれの学校図書館の規模や児童生徒に合わせて配架される。別置コーナーを設ける場合はルールを決め、図書館担当者の異動があっても引き継げるよう明文化する。
神奈川県大和市立林間小学校では、カーペットスペースに「絵本コーナー」を設け、仕掛け絵本などを配架した。同校で司書教諭を勤めていた(現・同市文ヶ岡小学校)今野智美教諭は、「みんなで囲んで交流しながら見て欲しい」と意図を語る。
■NDCを知り、配架の原則を知ることで、利用者はどの図書館に行ってもどこにどんな本があるのか、調べたい・読みたい目的の図書資料をより早く見つけ出せる。このスキルは調べ学習で役に立つだけでなく、生涯にわたる情報活用能力に繋がっていくはずだ。
子供たちにとって学校図書館は、日々の学びの中で触れる、最も身近な図書館。多くの学校図書館において、書架は子供たちが見渡せる範囲に並びNDCの全体をコンパクトに体感できるとも言える。学校図書館で本を探す力を養うことが、将来より規模の大きな大学図書館や公共図書館の利用に役立つ。
理解し修得するには
■毎年継続で根付く
大和市立林間小学校の書架の 分かりやすい分類記号の表示 |
000:調べる本(ずかん じてん じしょ) 100:こころ・考え方 200:歴史・地理、えらい人の話 300:社会(政治 民話) 400:算数・理科、いきもの 500:工業・家庭科、環境・のりもの 600:産業・交通 600:音楽・図工、体育・遊び 800:ことば・国語 913:にほんのものがたり 920〜:がいこくのものがたり (900の表記はなし) ※2014年11月撮影。法改正により、一部表記の変更あり |
実際にNDCをどのように指導するのか。
沖縄県八重瀬町立具志頭小学校の眞座孝乃学校司書は、毎年4月に国語の時間を使い各学年でNDCの説明を行っている。毎年行う理由を「1年に1度説明しただけでは、児童はほとんど覚えていない。毎年指導することで図書館の活用ができる。低学年のうちはNDCが主題ごとに仲間分けされていることをしっかり理解させ、高学年からは実体験することで興味をもたせる。高学年になるほど学習の中で図書資料を活用するため、さらに詳しくNDCを教え、資料の探し方を指導する必要がある」と話す。
詳しくは▽1年生…オリエンテーションではマナーやルールが中心。NDCの話はせず、絵本の並び方を説明する程度▽2年生…NDCが大きく10の仲間に分けられていて、その主題ごとに番号をつけていることを理解させる▽3年生…類の分け方、配架について▽4年生…類(10区分)から綱目表(100区分)までの分類と配架、NDCで資料を探す▽5年生…NDCの3桁の区分まで、請求番号の理解、配架、ワークシートを使った本探し▽6年生…5年生の内容に加え、巻冊番号の確認。
「分類」と聞いても児童はなかなかイメージできない。眞座学校司書によると、自宅で服や靴、食器などを別々の場所や棚に片付けるといった身近なものを例に出し、その仲間分けから説明するとわかりやすいという。
■平易な言葉で表示
文ヶ岡小学校の今野智美教諭は前任校で、児童にわかりやすい分類記号の表示を書架に採用した。例えば100は「こころ・考え方」といった具合だ(※右分類表参照)。
目指すのは「スマートに図書館を使いこなせる大人になること」。将来、公共図書館などで出会う表示方法が変わっても、「○類は何」と体に染みこめば、自分で表示を見て資料を探せると考えた。
「表示を分かりやすくすることで中身を根付かせ、教科の自力学習がよりしやすくなる。授業でも調べ学習の指導がしやすくなったが、子供たちに分かりやすい表示は、教員にも分かりやすく、"○類を見に行きましょう"と意識して指導できたことで浸透していったのではないか」と今野教諭は分析する。
■市の指導計画書の例
千葉県柏市教育委員会は、平成19年に柏市子ども読書活動推進計画を策定、学校図書館を核とした読書活動を推進している。小・中学校計62校共通の学校図書館の指導案があり、NDCについては「オリエンテーション指導案」の中で取り上げ、学年に合わせたNDC、本や情報の検索方法の指導を盛り込んでいる。小学校1、2年生の場合は「本の分類を簡単に知る。絵本は黄色いラベル、物語は9」となる。
同市教育委員会指導課の岩田久美氏によると、1年生のうちから「『生き物』なら4のお部屋に行こう」といった具合に、普段から自然に分類に触れるように指導しているとのことで、「小学4年生の国語でNDCを学ぶ際、これまで学んだ点が線となり、体系的な理解に結びつく」と話す。
同市の指導案はWeb「学校図書館ONLINE」(http://www.edulab.kashiwa.ed.jp/tosyo/)で公開している。
広がる学びの実践事例
柏市立南部中学校の掲示 |
本を探すためのNDCを、さらに活用して学びを広げる事例を紹介する。
■NDCで自己紹介
千葉県柏市立南部中学校では今年4月、1年生と2年生が学校図書館のオリエンテーションで「NDCで自己紹介」に取り組んだ。
生徒に配布されたA4プリント1枚には、本の貸し出しや返却等のルールに加え、NDCの一覧表や読み方を解説。さらに「NDCで自己紹介」の記入例を掲載。説明は次の2点。▽自分を表すキーワードを考えて、それに合った本を探そう▽できるだけいろいろなジャンル(0類〜9類)から本を選ぼう。
国語の授業の一環として、1年、2年それぞれの国語科の教諭が担当した。同校の大泉舞佳司書教諭によると「初めに各教諭と、図書館指導員が実演し、愛読書への熱い思いを語って頂いた」。その後、生徒たちはワークシートに選んだ本のラベルや奥付を見ながら記入し、班ごとに発表した。
梶原裕子図書館指導員はワークシートを回収、コメントを書いて図書館前の廊下に掲示した。「生徒たちが立ち止まってよく読んでいる」という。
10月には「先生はどんな本を読んでいるの?」というコーナーを設け、学校長をはじめ教員による「NDCで自己紹介」を掲示し、生徒と教員の注目を集めている。
誰がどんな本を読むのか、その人らしさや意外な一面が垣間見え、生徒同士はもちろん、生徒と教員を繋ぐ取組だ。
なお「NDCで自己紹介」は市内の他の中学校でも実践されている。同市の指導案や学校図書館指導員(学校司書)の研修でも紹介され、情報が共有されている。
■ビンゴで読書推進
「読書ビンゴ」を活用すれば、読書の幅が広がる。まずビンゴのマスに0類から9類までの本の分類記号を記入した用紙を用意する。子供たちは本を読んだらマスに色を塗っていく。
低学年は読みやすい本が多く冊数が多いのでマスを増やし、1冊の分量が多い高学年はマスを少なくするなど、学年でマス数を調整することもできる。
マスを大きくして書名を書き込むスペースがあれば読書記録にもなる。行事として実施し、景品として手作りのしおりや本の特別貸し出し券などを用意すると、さらに盛り上がる。
<書籍>
大平睦美(2012)「はじめよう学校図書館4 学校図書館をデザインする メディアの分類と配置」全国学校図書館協議会
小日向輝代(2014)「はじめよう学校図書館11 心をつかむオリエンテーション」全国学校図書館協議会
全国学校図書館協議会監修(2015)「司書教諭・学校司書のための 学校図書館必携 理論と実践」悠光堂
もり・きよし(原編)日本図書館協会分類委員会(改訂編集)(2014)「日本十進分類法 新訂10版 1 本表・補助表編」日本図書館協会
<新聞>
徳田悦子「みんなで使う学びの場 学校図書館 なるほど!Q&A(5)」教育家庭新聞2012年8月20日5面
福田孝子「みんなで使う学びの場 学校図書館 なるほど!Q&A(11)」教育家庭新聞2013年2月18日4面
眞座孝乃「みんなで使う学びの場 学校図書館なるほど!Q&A(26)」教育家庭新聞 2014年6月16日8面
【2015年10月19日号】
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