食育特集1 7割が健全な食生活<食育白書>

「共食」は週10回に改善

 平成27年版の「食育白書」が公表され、平成26年度食育推進施策について報告がなされた。食育基本法から10年が経過した昨年度の調査では、現在の食生活を「よい」「大変よい」と前向きに評価している人が68・6%となっており、日頃から健全な食生活の実践を心がけている人は4人に3人にあたる75・3%という割合となった。

「食育」を知った場所「学校」が第2位に

 食育の実践が進み、その周知も高まる中(「言葉を知っていた」平成26年77・9%、平成25年76・6%)、食育の言葉を知った場所等は「メディア」がトップ(79・7%)だが、次に高い割合を示したのは「学校」の18・2%となった。

  共食の割合高まる朝食で前年比10%増

 第2次食育推進基本計画(平成23年〜27年度 以下、第2次推進計画)で重視されている「共食」については、1日のすべての食事を一人で食べる頻度が「ほとんどない」という割合が71・8%という結果が出た。共食は朝食58・9%、夕食65・0%と前年よりそれぞれ10・7ポイント、8・8ポイントの増加。

 第2次推進計画では、朝食または夕食の「共食」の目標値を10回以上としており、現状値が10・0回となっていることから維持向上が望まれる。

 一方で、第2次推進計画で食育の推進として掲げる目標11項目のうち、目標値をクリアした項目は2項目のみで、他9項目は未達成。第2次推進計画策定時と比べると改善しているものもあるが、課題は多い。

 食育の必要性を実感しない20・30代

 今回の食育白書では、食育推進施策の課題と取組として20代から30代の「若い世代の食育の推進」を特集している。

 1日に2回以上、主食・主菜・副菜をそろえて食べることを「ほとんど毎日」と回答した人の割合が他年代に比べ20代が圧倒的に低く、40代以上は男女ともに5割以上であるのに対し、20代は男子が31・9%、女性が47・1%。

 朝食を「ほとんど食べない」と回答した20代から30代の男性は、それぞれ19・4%、20・5%とほぼ5人に1人。女性も20代は16・2%という結果だ。

 聞き取り調査によると、体調の変化などをきっかけに食生活を見直す20代、30代がいる一方で、食育や朝食摂取、栄養バランスについて重要だという意識が低い人も存在し、その必要性やメリットなどを感じていないことが、実践に至らない理由の一つであることが浮かび上がった。

 今後、若い世代が食育に興味・関心を持ち、自らの食生活の改善や周囲への食育の啓発などに楽しく主体的に関わっていくことができるような取組が全国で展開されていくことが期待される。そのためには、義務教育である小中学生への食育のさらなる浸透が重要だ。

 今年8月には「第3次食育推進基本計画(平成28〜32年度)」の骨子案が食育推進評価専門委員会で話し合われ、10月にパブリックコメントを募集する予定だ(2面に続く)。なお、食育月間である今月に毎年行われている「食育推進全国大会」は、6月20日、21日に東京都墨田区を会場に行われる。

「国産食材」現状値は77%

 第2次食育推進基本計画で食育の推進として掲げる目標の11項目のうち、目標値をクリアした項目は2項目。学校給食に関連した項目としては、「学校給食における地場産物を使用する割合」「学校給食における国産食材を使用する割合(平成25年12月基本計画一部改訂により追加)」が挙げられている。

SSSで食育後押し

第2次食育推進基本計画 食育推進の目標値と現状値
第2次食育推進

 「学校給食における地場産物を使用する割合」は目標が30%以上で、第2次食育推進基本計画策定時が26・1%、現状地は25・8%とやや下降気味だ。「学校給食における国産食材を使用する割合」は80%以上が目標で現在77%となった。

 「学校、保育所等における食育の推進」は、栄養教諭を中核として取り組まれており、文部科学省では昨年度初めて「スーパー食育スクール(以下、SSS)」のモデル校を指定、食育の多角的効果について検証がなされた。今年度もSSSの指定校が決まっている(「スーパー食育スクール」30事業を指定参照)。

 食育白書には、昨年度SSSの指定校となった岡山県倉敷市立西阿知小学校、山形県戸沢村立戸沢中学校、静岡県立稲取高等学校の事例が紹介されている。西阿知小学校と稲取高校は昨年度の学校給食週間中に文科省で事例を発表しており、さらに本年度も指定校となっている。

 戸沢中学校は登下校を含め運動活動量が減少するなど、生活習慣や健康に関する課題を抱えていたことから、生徒一人ひとりが自分の健康を考えて食事や生活を自己管理できるように「自己管理能力の育成」「体力・運動能力向上と健康な体づくり」「地産地消の推進と食事改善に係る地域・家庭との連携」に取り組んだ。

 同校では体力・運動テストとヘモグロビン値測定、骨密度測定、生活習慣に関するアンケートを実施し、数値が低い生徒は「朝食を欠かす」「ぐっすり眠ることができない」「テレビの視聴時間が長い」「夜ふかしが目立つ」生徒が多いことが考察され、「早寝・早起き・朝ごはん・携帯スマホは1時間以内」に加え、体育は思いっきり体を動かし、意識的に校内を歩くなど身近なことから体力向上を目指した。

 また、伝承作物である「えごま」の栽培、収穫、搾油体験や、学校の畑で野菜の栽培体験活動を実施。収穫した野菜は家庭に持ち帰ったり、学校給食でも活用。学校給食においては、産業振興課の協力を得て「戸沢村生産者グループ」を組織、地場産物の活用を増やすことに成功したという。学校・家庭・地域が連携した活動となっているようだ。

 

【2015年6月15日号】

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