連載:管理職と学校経営 校内で上手く関わる術(すべ)

授業づくりへの提言(上)―大阪青凌中学校・高等学校入試広報部 前田勉

豊かな表現力や秘めた力を引き出す

前田 勉 校長 学校は様々な教育活動を通して、子どもたちの自己実現を支援・指導する場所。その学校生活でもっとも多くの時間が割かれている授業を充実させることは、学校教育目標を達成させる大きな要因でもある。当然校長としては、経営戦略の重点課題の一つとして「授業の充実」を挙げ、具体的な方策を明示する必要があるわけだが、これには学校運営上2つの大きなメリットがあると考えている。

望ましい校内世論の醸成に"学力"が寄与

  1つは「授業づくり」が、学校活性化の起爆剤になること。自身の経験から「学力は判断力につながり、望ましい校内世論の醸成につながる」ということを痛感している。2つ目はより良い「授業づくり」を目指す中で切磋琢磨が見られ、教師としての資質を高めることができること。外部の指導者を招いての校内研や授業研究を通して、児童・生徒が学びあい高めあう授業というものが論議され、その質を問うことで「教師力」の幅と積み上げが期待できるわけである。

  さて、その授業づくりであるが、全ての教員がそれなりの理想イメージを持ち、教材研究に精を出し、板書にも工夫を凝らしながら「わかる授業」を目指す。だが、実際の授業となると、全てが学びの期待感にあふれる児童・生徒ばかりではない。とりわけ、公立の義務教育現場では、授業規律の乱れや学びから逃避する傾向がかなり散見される。

  理屈ではわかっていても、肯定感あふれる授業はそう簡単ではない。しかも、人の集中力は15分程度と言われる中、小学校では45分、中学校では50分が5限も6限も設定されている。いかに授業に興味・関心を持たせながら、集中力を維持させるかとなると、それなりのテクニックや専門性が必要となってくる。

楽しい授業の3要素

  はじめに授業づくりのヒントを探ってみたい。小学生から大学生までを対象にしたある調査によると、「楽しい」あるいは「良かった」と思う授業には次の3つの要素が見られる。

(1)自分の考えが認められる
(2)授業に変化がある
(3)自ら触れたり操作することのできる教材がある

  これらを充足させるためには、授業に引き込むための「つかみ」や洗練された質問、それに答えることで所属感や承認欲求が満たされる工夫が必要。そして、授業のリズム感、多様な学習形態の設定も重要だ。また、教材研究に力点を置き、可能な限り豊富な具体物があり、見たり操作することができる場面を準備する努力が求められる。

  当然、授業づくりの根底にはポジティブな生徒観と、生徒の有能さが前提としてあるので、真逆の生徒観に立脚すると、最終的には建前や力で押さえ込む授業となるので注意が必要だ。

知的好奇心をゆさぶり わかる・楽しい授業を

  その他、板書の構造化、ICT機器の積極的導入、豊富な話題とともに児童・生徒の日常生活に結びつける等、彼らの知的好奇心を揺さぶり、豊かな表現力や秘めた能力を引き出すことが「わかる授業」「楽しい授業」の扉である。

 

前田 勉
前:大阪府高槻市校長会会長  現:大阪青凌中学校・高等学校入試広報部

【2013年10月21日号】

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